DVD Forumは,ディジタル放送などのデータ・ストリームをそっくりディスクに記録するための規格「DVD Stream Recording」(以下,SR規格)を策定中である注B-1)。2000年2月に最終案であるVer.0.9をメンバ各社に公開,2000年末ころの正式規格化を目指す。

 書き換え可能なDVDに対する録画フォーマットとしては「DVD Video Recording」規格(以下,VR規格)がすでにある注B-2)。現行アナログ・テレビ放送などをDVDレコーダ内でMPEG2符号化して録画するときのフォーマットを定めた規格だ。これに対して今回のSR規格は,IEEE1394などのディジタル・インタフェースを介して流入するデータ・ストリームを,そっくりそのまま記録する(図B-1)。再生時は,データ入力時のタイミングを相対的に守りながら元通りのストリームを出力する。

VRとSRの混在記録を可能に

 SR規格の特徴は,主に四つある。
  (1)データ配置方法やファイル管理方法などをVR規格と共通化することで混在記録や混在編集などを可能にしたこと,
 (2)「Access Unit」と呼ぶディスク・ナビゲーション時などに使うポインタを定義できるようにしてストリーム記録ながらもランダム・アクセスによる便利な再生/編集機能を実現できるようにしたこと,
 (3)ディジタルHDTV放送の録画など,データ転送速度が現行DVDより速くなっても十分に対応できるようにしたこと,
 (4)「Application Private Data」と呼ぶ,SR規格対応のDVDレコーダに接続されたアプリケーション・デバイス(ディジタル・セットトップ・ボックスなど)が独自に使える領域を設定したことである。
 (1)~(3)によって,地上波アナログ放送やCSディジタル放送,BSディジタル放送が混在する時代でも,一つのユーザ・インタフェースで録画再生できるようになる。たとえば,Access UnitにIピクチャの位置を指定することなどで,ストリーム記録でも通常の特殊再生を実現できる。
 (4)は,セットトップ・ボックスの開発者などが,他社製品との差異化に使える。たとえば,標準とは異なるGUIやメニューのデータを追加したり,ユーザの視聴行動データをディスクに記録しておくことなどが可能になる。


図B-1 ディジタル放送のデータ・ストリームをそのまま蓄積
DVD Forumが策定中の「DVD Stream Recording」規格では,たとえばディジタル放送のデータ・ストリームを受け取るとまず,データ・パケットの到着時間に応じてタイムスタンプをつける。これを複数まとめて,DVD-Videoなどでも使っているMPEG2のPS(program stream)パックのペイロード内に詰めて記録していく。この図は,DVB(digital video broadcast)方式の放送データを記録したときの例である。再生時はこの逆で,受け取ったタイミングに合わせてパケットを送出する。(図:DVD Forumの資料を基に本誌作成)