独走による業界標準か,統一か


図6 実験装置の発売が研究開発を加速
パルステック工業が,2000年4月12日~14日に開催された光ディスク関連の展示会「OPTICAL DISC PRODUCTION」に参考出品した実験装置。(a)は,オランダPhilips Researchやソニーが検討を進めている「DVR-blue」の技術に基づく装置。(b)は,同装置のカバーを開けたところである。(c)は,横河電機のブースで見せた装置。松下電器産業と横河電機が共同開発した,小型SHG(second harmonic generation)レーザ光源を内蔵する。(写真:本誌)

 さまざまな提案が入り乱れる状態から,約1年で明確な方向性を打ち出さなければならない--混沌の真っただ中にいるある技術者は,こう悲鳴を上げる。「DVDや3.5インチ型光磁気ディスクの規格は,決めるのに2~3年かかった。DVDの次世代では,さらに各社の事情が交錯する。下手をすると決定まで4年かかるかもしれない。大手メーカのエゴに揉まれてビジネス・チャンスを逸したくない」。

 こうしたなか,しだいに先行逃げ切り待望論を唱える技術者が増え始めた。「全員で意見を出し合いながら調整しようとしても,もめるだけ。強力なメーカがダントツに早く製品化してデファクト・スタンダードを獲得するしか方法はない」。しかし,この論理に疑問を呈する技術者もいる。「先行といってもせいぜい1年程度。別のメーカやグループが『すぐに対抗製品を出す』とアナウンスすれば消費者は買い控える。そうなれば,デファクト・スタンダード化は夢に終わるだろう」。

 しかし,悲観的な話ばかりではない。今回の次世代光ディスク開発では,大手メーカが規格化前に「虎の子」の実験装置を他社に提供し始めた(図6)。技術情報の提供によってメーカ間の意思の疎通が進むかもしれない。

 松下電器産業や東芝,日立製作所などの大手メーカは現在のところ,柔軟な姿勢を示している。「実験は現在,NA0.6および同0.65で行なっているが,同0.85の技術的な検討も開始した。次世代では,現行DVDを否定してまったく別のシステムを作るのではなく,築き上げたDVDの世界を土台にして移れるように考えるのが大切だ。それさえ達成できれば,ユーザにとって無意味な仕様や技術にこだわるより,規格の一本化が重要だ」(松下電器の田中氏)。「もし書き換え可能なディスクで,片面単層25Gバイトが必要なら,技術的にはNA0.85の対物レンズを使う薄型カバー層は理にかなった方式だ」(東芝の山田氏)。「技術は常に前進するもの。それならば,同条件で最大の面記録密度が得られる薄型カバー層の土俵で互いに技術を競うのが筋だと個人的には考える」(日立製作所 デジタルメディアグループ デジタルメディア営業本部デジタルプロダクツ コンシューマプロダクツ営業部 部長の吉野正則氏)。

 各社が柔軟な姿勢で技術評価を進めれば,トップダウンによる次世代規格の大統一は意外に近いかもしれない。

韓国メーカ,積極的な技術提案で
中核メンバー入りを目指す