「承認」で勢いをつけられるか

 次世代光ディスク規格「Blu-ray Disc」と「HD DVD」の主導権争いが熾烈になる中で,ハリウッドの賛同を得られるかどうかは極めて重要な意味を持つ。その状況下で2003年11月18日に起こったのが,再生専用媒体規格「HD DVD-ROM」(仮称)の一部の承認だった(図2)。DVD Forumの幹事会(Steering Committee)で決まったものだ。  HD DVD規格は,2度にわたって否決されてきた1~2)。状況が覆ったのは,次の2つの要因による。投票のルールが変更になったことと,以前は保留の立場だった韓国Samsung Electronics Co.,Ltd.が賛成票を投じたことである。


図2 再生専用HD DVDの物理フォーマット規格をDVD Forumの幹事会が承認
2003年11月18日,DVD Forumの幹事会(Steering Committee)はNECと東芝が共同提案していた次世代DVD規格「HD DVD」の一部を承認した。承認を受けたのは,再生専用HD DVD規格の物理フォーマット規格の0.9版である。HD DVD規格は2003年6月と9月の幹事会で事実上否決されていたが,3度目にして一部承認にこぎ着けた。

 このうち承認の決め手となったのが,投票ルールの変更である。DVD Forum憲章の「Article 8」を変更し,最低1/3の賛同を得られれば賛否の数に保留票を算入しないことが幹事会で採決された。

 憲章を変更するには幹事会で7割の賛同を得る必要がある。今回は13票でこれを満たした。「HD DVD規格に反対するBlu-ray Discの策定メンバーも憲章の変更に賛成してくれた。それはうれしいが,理由が分からない」(HD DVDの関係者)。これまでBlu-ray Discの策定メンバーはHD DVDの規格承認に当たって保留票を投じることが多く,これが否決につながっていた。Blu-ray Discの関係者は「理由もなく反対すれば,独占禁止法に違反する恐れがある」と解説するが,真意は明らかではない。

 さらに承認を決定的にしたのはBlu-ray Disc FoundersのメンバーであるSamsung社の賛成だ。同社は2003年9月22日に,東芝とCDおよびDVD装置に関する事業を統合し,新会社を設立すると発表した。次世代光ディスク関連の研究開発などは統合対象に含まれていないものの,姿勢の変化の裏にはこの影響があるとの見方が強い。

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