書店のビジネス書コーナーに並ぶ書籍のタイトルに「ロジカル」とか「ロジック」という冠のつくものが増えてきました。仕事のやり方を、思いつきであいまいに進めるのではなく、もっときちっと論理的に整合させないと世界から取り残されるという主旨のハウツーものが多いようです。下の図は、書籍検索サイトでビジネス書のカテゴリーにおけるロジカルやロジックというキーワードで抽出された書籍数を、出版年度別にプロットしたものです(◆青い線)。2000年頃を契機に急増し始め、近頃では毎月一冊くらいのペースで出てきていることがわかります。

 その中身をみると、ロジカルライティングとかロジカルシンキングといった「読み書きそろばん」的なビジネスの基礎となる脳の使い方に関する一群があります。もう一つは、ロジカルプレゼン、ロジカルネゴシエーション、ロジカルプロジェクトマネージ、ロジカル面接術といった、具体的なビジネスシーンを想定したプロセスに関するノウハウ説明もの。おおよそ、この二つに大別されるのではないでしょうか。

 このブーム、単に「ロジカル」という輸入語が定着し始めたから目立つようになったのかとも思ったのですが、どうもそうではありません。論理的とか論理性という日本語で同様の抽出を行っても傾向はほぼ同じでした(▲緑の線)。日本のビジネス界は90年ころを境に、論理とかロジックとかいう考え方に明らかに反応し始めているようなのです。

 念のために、対象語による検定も行ってみました。論理系の冠言葉とは対照的な検索ワードとして、エモーショナルとか、感性、直感、直観などのキーワードを選んで同様にビジネスカテゴリー本で抽出をしてみたのです。その結果、総数では論理・ロジカル系と同程度の数があるのですが、経年的な変化は特に認められず、80年代から一貫して毎年8~10冊程度が出版されていることがわかりました(●赤い線)。

 内容的にみると、こちらは「決断」とか「意思決定」といった「最後に大事なことを決める際」には、「理屈ではなく内なる暗黙知的なものを信じるのだ」風なものが多いようです。想定ビジネスシーンで多かったのは、マーケティング、商品企画、デザインなどで、最上流プロセスに偏っていることが特徴といえるでしょう。

 内容を読み込んではおらずタイトルだけの乱暴な分析ですが、あえて言うと「感性と論理性をうまく使い分けよう」ということではないかと思います。

 ビジネスのアイディアを生み出す最上流の部分では…(次のページへ