ホンダの基幹車種である「シビック」が全面改良を受けた。この全面改良は、1972年の初代シビック誕生以来の、一大方向転換といえる。初代シビックは、ホンダの主力であるバイク店の店頭にも並べることのできる小型車として、その全長と全幅を掛け合わせた面積が5平方メートルとなることを目指して開発された。そこから、FF2ボックスという構想が現実のものとなった。以来、徐々に車体寸法は大型化してきたが、それでも5ナンバーサイズが堅持されてきた。しかし、今度の8代目では全幅が1.7メートルを超え、3ナンバーのミドルサイズセダンとなった。
図1◎ホンダ「シビック」 |
大きな原因は日本市場の変化にある。5ナンバーセダンの売れ行きが悪くなっているのだ。一方、シビックの主力である米国、そして拡大を期待される欧州市場では、4ドアセダンの販売は堅調だ。ある意味で日本市場は捨て、シビックを確実に売れる市場向けのセダンとして開発する道をホンダは選んだことになる。また米国には2ドアクーペが、欧州には根強い人気の5ドア2ボックスが、それぞれ日本にないモデルとして投入される。
車格が拡大したことによるのと同時に、ホンダの新車開発で常に優先される技術的進化を求めて、新型シビックのプラットフォームは、従来型の熟成ではなく新開発された。車体剛性が高く、衝突安全と、操縦安定性の高さを実現するのはもちろんだが、より耐久性に優れた高剛性ボディとするのが大きな狙いだった。
試乗した感触は、拡大された室内空間により、まるで「アコード」に乗っている気分になる。静粛性や走りの滑らかさも、上級車然としている。もはや我々の知る、元気一杯に駆け回るシビックの感覚は皆無だ。この上質さを長い年月にわたって維持するため、生産工程に手が加えられ、高精度のボディ生産が行われることになった。従来以上に精度の高い車体を量産するため、通常より半年早く、車両開発期間中に生産部門との共同作業が始められたという。
図2◎室内空間を従来より拡大し、ゆとりを持たせた。 |
ホンダ車は、走行距離が延びるとトヨタや日産に比べボディの傷みが早いと言われ続けてきた。それが、このシビックから改善されることになる。そして今後は、この高精度ボディがホンダのスタンダードになっていくはずだ。ホンダ車の魅力が、長持ちすることにつながる。