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 文部科学省が主催する理系学生の科学の祭典「サイエンス・インカレ」。まだあまり馴染みのない名前である。しかし、数年後には大学生や高等専門学校生の憧れの登竜門となっているに違いない。私は幸いにも2011年度(2012年2月)に開かれた第1回大会から審査員の一人として参加させていただく機会に恵まれた。その感想や方向性、期待と夢を述べたい。

 正直に言おう。学生に研究の自発性を要求し、なおかつ見返りも少ない研究発表会などに今の学生の関心は薄いだろうし、初年度で宣伝も充分には行き届かず、盛り上がらないのではないかと私は思っていた。ところが、驚くべき熱気と意欲に出会い、非常に感動させられた。「日本の未来は悲観したものではない。日本の若者はすごい」と改めて意を強くさせられたのである。企画評価委員会の委員の一人として自分の不明を詫びるとともに、責任を痛感させられた。今後はもっと日本中に大きく知らせドンドン皆が参加できるようにし、このような祭典を通じて、全国の学生たちを国際性豊かに大きく育てなければならない。

 新しい領域を切り拓きたいという学生の意欲を伸ばすためには、今はまず日本中の理系の学生に周知徹底させることが大切だ。そのためには学生が参加したい動機をもっと高めてやることが必要だと思う。それは、理系学生たちの大学卒業後の進路である。「サイエンス・インカレ」で何らかの表彰(なるべく種類を増やす)を得ることが、進学や就職にもつながるようにすることが大切だろう。特に“将来の就職”への可能性は動機として重要である。多くの企業賞の設置や各大学の学内賞へのつながりも興味深い。祭典そのものを就職活動の窓口としても機能させる。そのためには企業と連携する必要がある。

 また「サイエンス・インカレ」そのものに参加しやすくするため、各地にブロック別の地方大会を設けて、その入賞者は書類審査なしに「サイエンス・インカレ」(全国大会)に出場できることを考えるのはどうか。最終的にはアジア大会そして世界大会を開く構想も必要だろう。高校生向けの世界大会は米国の大会が著名だが、大学生対象の大会はまだない。日本の産業科学復活のキッカケにできるかもしれない。

 理系学生には、各自の独創性を生かした研究活動を期待する。「人がやらないことを考える」ということは、“人が馬鹿にする”ことや“人がやるのを嫌がる”ことを考えたり、“人が捨てたり諦めたりする”ことや“先生や知識人が評価しない”ことを拾うことであったりする。ノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥氏が語っている“失敗を恐れない”ことが重要である。君たちにはモノを考え創造する時間と自由と未来が充分にある。常識にとらわれず、中高年や老人がアッと驚くような柔軟な発想でモノを考えて、新しい世界を切り拓いてほしい。