台湾のPlurkはこうした変化を学び取り,“どうでもいい”tweetを増やす仕組みを用意することによって,急成長を遂げた注4)。それが,高い頻度で書き込むほど「カルマ」が上昇するというポイント・システムだ。このポイントは,ユーザーが知人をPlurkに招待することによっても増やせる。

注4) Twitterにおいて個々の書き込みである「tweet」を「つぶやき」と和訳する場合もあるが,本来これは誤りだった。つぶやきのような 必ずしも聞き手を必要としない発言ではなく,小鳥がさえずるがごとく軽い調子で発見を伝えたり意見を交換したりすること。これがtweetの意味である。

†カルマ=因果応報を意味する仏教用語。

使える機能が増える

図2 使うほど機能がレベルアップ
Twitterに代わって台湾で人気なのがPlurkである。特徴は,カルマと呼ぶ得点システムや横スクロールの画面表示にある。
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 Plurkの運営側は,「カルマが41を超えると悟りに達し,81を超えるとそれが涅槃に至る」と解説している。実際には,単に使える絵文字の種類が増えたり,Webサイトの背景画像を自分好みに変えたりするようになるだけである(図2)。

†涅槃=悩みや束縛から脱することを意味する仏教用語。

 しかし,それでもPlurkのユーザーは,このポイントを上げようとしゃかりきになっている。書き込みをサボると,カルマが減ってしまうからだ。つまり,カルマが減ることで使える機能が減るのは嫌だ→たくさん書き込む→カルマが上昇する→機能が増える→増やしたカルマが減るのが嫌だ,というサイクルが回っているのである。台湾人の中にゲーム好きが多いことも,このポイント・システムが好評を博した原因かもしれない注5)

注5) Alexa社の統計によれば,人気Webサイト・トップ50のうち五つが,ゲーム関連の情報交換を主目的としている。

 Plurkの利用頻度を重視した運営方針は,発見や意見という意味のtweetを読みたいユーザーにとって好ましくない。雑音というべき無駄なtweetを目にする確率が高くなるからだ。Plurkはそもそも,Webブラウザーでアクセスすると各書き込みが1行しか表示されない上,画面が横にスクロールするという課題もある。Twitterよりも精読しにくいのだ。

 だが,Plurkの運営側は,それで構わないと考えているようだ。書き込み数やユーザー数が増えさえすれば,広告媒体としての価値が高まるためである。親しい人や好きな人以外にとっては雑音のようなtweetであっても,その蓄積物はユーザーの趣味・嗜好や人間関係を色濃く反映している。

淘宝網が台湾でも人気に

 Plurk以外に注目度が上がったWebサービスといえば,ショッピング・サイトの中国Taobao.com(淘宝網)社である。台湾でのサービス開始から1年ほどで,急速にトラフィックを集めるようになった。Alexa社によると,ショッピング・サイトの中で4位を保持している。

 淘宝網は,電子商取引の中国最大手。ソフトバンクが出資する中国Alibaba(阿里巴巴)社の傘下でもある。店舗数は400万,取扱商品は4億点に上っている。中でも人気があるのが,台湾の半額程度と安い衣類である。中国から台湾への配送は2日ほどしかかからない場合もある。

 台湾人が淘宝網を利用する上での課題は決済である。これが「代買」という新たなビジネスを生んだ。代買は,ユーザーの代わりに料金を支払う代理購買業者である。代買の競争は激しく,表面上の手数料が不要とうたう企業もある。こうした業者は,台湾元と人民元の為替レートを実勢よりも業者側に有利に設定することで利益を得ている。