新人を採用して、3年以内に辞められるとその損失は、一人当たりおよそ300万円、といわれて企業の人事採用担当をしてきました。採用の告知、面接、入社後の研修にかけた費用、戦力にならなかった時期の月給、退職者の補充にかかる費用も含まれるのだと、そう教わりました。

企業にとって、明確な損失であるはずの入社後3年以内の早期離職は、なぜ起きるのでしょうか。

何も見えないから「とりあえず3年」って決めていた

「なぜ大卒の3割が3年で辞めるのか」というテーマで、学生と話あった時、興味深い話を聞くことができました。それは

「とりあえず3年働いた」

という意見でした。今までは、小学、中学、高校、大学と、6年-3年-3年-4年という区切りの中で学んできました。1年経てば教室もクラスも変わり、3年経てば学び舎も変わることが決められていました。区切りに何が起こるのかを理解しているので、それまでの日々を過ごすことができました。それが、会社に入ると、今日やる仕事と明日やる仕事も変わる、異動で、仕事も勤務地もいつ、何がどうなるか、予測がつきません。だから、

「とりあえず3年はやってみよう」

と自分で区切りを決めることによって、会社環境に順応しようとしているのだ、というのです。つまり

6-3-3-4-会社38年間

ではあまりに先が見えないという言い分なのです。

確かに、新人の間は様々な感情が日々交錯します。採用選考を勝ち抜いたという「選ばれた自信」をもって入社します。認められたい、何かしたいという情熱や期待を持って仕事をする中で、自分の価値を見いだし、小さな成功をして褒められて自信をつけ、高い目標を掲げて向上のスパイラルをつくれることが理想です。

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一方で、緊張、不安、挫折から小さな失敗、焦り、逃避、自己卑下と、自信を喪失していくと負のスパイラルに落ちていってしまいます。