まず、パシャ。モニターを確認。顎が上がっている・・・

次、パシャ・・・なんか、にらんでいるみたいな目・・・

次、パシャ・・・ああ、前髪がぐしゃってなっちゃった・・・

鏡を見てもう一度直します。

パシャ・・・もう少し口角ひけるかな・・・

パシャ・・・あん、目をつむっちゃった・・

パシャ・・・なんか、だんだん、猫背になってきちゃったね・・・

こんなことを続けているうちに、Iさんも疲れてきて、何回でも撮りなおしOK!と言っていた写真館のお姉さんもさすがにイライラしてきてしまいました。この中で強いて言えばこの顔かな、と言う写真を4枚もらい、お金を払って学校に戻りました。履歴書写真に妥協してしまった後悔だけが残りました。

履歴書写真はただ貼ってあればよいというものではありません。人事の採用担当時代、履歴書写真からずいぶん多くの情報を受け取っていました。書類選考、面接、配属部署まで影響するのが履歴書写真です。しかし、学生は、そんなことは全く考えずに写真に写ってしまうのです。まるで「履歴書写真は貼ってあればいいだろう」というような感覚で。

何も考えずに撮影されると、どうしても、何かに守られて、庇護されている無防備な顔が写りこみます。写真の写りの良し悪しではなく、“自立した表情”がないと言ったらよいでしょうか。写真を見れば、真剣な就職活動をしているかどうかはわかってしまうのが企業です。

就職活動における履歴書証明写真に対して、危機感ともいえるものを感じたIさんとの写真館ツアーが、実は、就職塾向日葵が履歴書写真まで手がけるようになったきっかけです。

ありのままの自分を写すのではなく、

社会人としての夢や可能性に満ちた自分を写しこむ

これが履歴書証明写真なのです。

出張フォトスタジオ向日葵では、履歴書の文章にあわせて、全員(男子も女子も)メイク、髪型、身なりを整えます。ストロボが複数たてられた空間で、時間をかけて、ひとりひとりに背景を選び、ワンショットずつ前髪を直し、テカリを押さえながらの撮影風景は、本格的なモデル撮影さながらです。

不思議なことに、身なりを整え、「やる気あふれるフレッシュな新社会人」として写すと、学生の気持ちが

「やる気あふれるフレッシュな新社会人」になっていきます。社会人として、コミュニケーションできる表情になる“瞬間”にシャッターを切ります。この「やる気あふれるフレッシュな新社会人」になった瞬間の自分を、目に見える形にすることで、それが目標となり、お守りのような効果をも発揮するのです。

“ありのままの自分”と“社会人としての自分”の違いを意識するところから、就職活動が始まり、それが身に付いた時に内定が出るのです。

今、Iさんは、初志貫徹、自動車メーカーでしっかり働いています。

そして、今年も、出張フォトスタジオ向日葵の、「ありのままの自分」から「社会人としての自分」に変わる瞬間をつくる毎日も始まります。

(コラムで提示している学生の事例は、就職塾向日葵が指導したものであり、処方は、個人の状況などによって異なり、すべての人に当てはまるとは限りません)