年末年始が迫り、度重なる忘年会で胃腸も疲れ気味。せめて自宅では、手軽にヘルシーな食事を取りたいーー。

 そんな要望に応える電子レンジ用調理器が売れている。中でもレンジ専用の“鍋”に人気が集まっている。

 10月下旬に主婦の友社が発売して以来、完売店が続出しているのが『シリコンスチームなべつき使いこなしレシピBOOK』。12月時点で30万部を売り上げるヒットとなっている。

 マイナス40~230度まで使用可能なシリコン樹脂でできた鍋で、レンジのみならずオーブン調理にも使える。食品を入れて冷凍したり、食器洗い機で洗浄もできたりと、保存や後片づけにかかる手間も省ける。

 シリコン製調理器具と言えばルクエやヴィヴなどのブランドが有名だが、これらのブランドの商品は通常3000~5000円と高額で、気軽に試すことが難しかった。今回、1680円と手頃な価格帯で書店に並べたことで、一人暮らしの男性など幅広い顧客の目を引いた点がヒットの要因に挙げられる。

 一方、レンジでより本格的な料理を楽しみたい人に売れているのが、プラスチック製の調理鍋「クック膳」だ。

3層構造で本格料理が可能に

 「手間のかかる料理も、易しく簡単に作れたら“キッチン革命”を起こせるかもしれない」

 そんな思いから、料理研究家の千葉真知子氏が10年かけて開発した商品で、2003年末に発売した後、クチコミで人気が沸騰。「QVCテレビショッピング」の雑貨部門では長年にわたり売り上げ第1位となり、テレビ通販の扱いが減った2010年も日本国内で約1万個を売り上げる。米国でも人気が高く、 2010年9月には英語版のレシピ本も出版。総ユーザー数は50万人以上に上る。

 特徴は本体、中蓋、外蓋の3層構造にある。本体容器と外蓋の間に入れる中蓋には「蒸気バルブ」があり、食材やレシピに応じて開閉を調節し、上から外蓋をかぶせてロックする。火を使わずとも焼く、蒸す、煮るといった調理が可能で、加熱ムラの心配もない。

料理下手でも失敗知らず

レンジ用鍋「クック膳」。実勢価格は6000円前後、お勧め料理のレシピ本も付属する

 なぜ今、レンジ鍋が人気なのか。その理由を探ってみると、消費者ニーズの変化が見て取れる。

 1つは家事時間の短縮に対する需要の高さだ。共働き家庭が増える中、食事の準備の手間を減らしたいとの声は高まる一方だ。レンジ鍋ならレンジに入れて加熱ボタンを押すだけで安全に「ながら調理」ができ、調理時間も短くてすむ。例えば、クック膳なら鯖の味噌煮が4分ででき、ご飯は15分で炊ける。

 料理下手でも失敗が少ない点も、レンジ鍋が支持される理由の1つだ。電子レンジで調理するので焦げつくことがなく、肉や魚料理が煮崩れる心配もない。女性でも料理をする習慣のない人が増えている中、経験が少なくても誰でも作りたての本格料理を楽しむことができる。

 そして外せない理由が、ヘルシー志向の高まりだ。従来の鍋やフライパン調理に比べて油の量を減らせ、食材の持つ栄養価を保ちやすい。飲み会疲れした体に優しい料理が可能と言える。

 米国では約20年以上前にレンジ調理ブームが到来し、以後、日々の食卓にレンジは不可欠な存在となっている。日本の調理が“欧米化”する日も、そう遠くはなさそうだ。