年末も押し迫り、街はクリスマスに正月と、大型イベントを前に賑やかさを増している。「クリスマスも年末年始も家でゆっくり」という若者が増えたとも言われるが、果たしてそれだけか。バブル経済全盛期を彷彿させる、「クルージング」のサービスが案外、根強い人気を誇っている。

 クルージングで連想するのは、やはり「船」。日本郵船子会社で、品川埠頭を拠点に、クルーザーを運航するクリスタルヨットクラブも、年末に向け、個人客からの予約が好調だという。

 クルージングと言っても、サービスの内容や価格帯は幅広い。例えば、クリスタルヨットクラブの場合、夜でもクルージングのみであれば、簡単な飲み物がついて1人4000円というお手軽なコースを用意する。同社のゲストハウスや近隣のレストランで食事した後に、1時間の東京湾周遊を満喫できる。

 一方、クリスマス限定で用意された、1人2万7000円のプランでは、夕食からクルージングまでがセットになっている。トータル2時間半に及ぶプランの中には、打ち上げ花火や、ハープ、フルートの生演奏、そして女性へのバラの花のプレゼントまで含まれる充実ぶりだ。

クルージングを楽しむ20代の若者も増えている(クリスタルヨットクラブの客船)

 「20代前半のお客様も着実に増えている。記念日やイベントの際に、サプライズとして利用されることが多い」(クリスタルヨットクラブ)という。

 さらに、サービスの時間そのものは15~20分程度と短いものの、じわりと人気が伸びているのが、ヘリコプターを使ったクルージングだ。一般向けには千葉県浦安市や横浜市のヘリポートを発着場所とするエクセル航空がサービスを展開する。

ヘリで東京周遊が1万円前後

 夜間のパックでは、15分で浦安を起点に東京を周遊し、東京タワーや六本木ヒルズ、東京ドーム、レインボーブリッジといった名所の夜景を一望できる。平日であれば大人1人の料金は1万2000円となる。

 既にクリスマスは20代後半から40代の予約が多く集まっているが、今年からヘリポートのラウンジにカフェを併設したことから、若者客が増加しているという。同社は「ヘリコプターというと、非常に高価なイメージがあるが、実際には1万円前後から利用できるため、お客様も手が出しやすいのではないか」と分析している。

 また、エクセル航空などとの企画商品を販売するはとバスは、最新の流行を取り込んだ。昼間はヘリで「東京スカイツリー」を周遊し、その後に船に乗り込んで夕日を眺めながら、バイキングを楽しめる。もちろん発着場まではバスの送迎が付く。12月に予定する2回については、11月末に満席となり、キャンセル待ちの状態という。

 長引く不況で、確かに日々の消費は伸び悩んでいるかもしれない。だからこそ、ここぞという時には、思い切ってお金を使ってみたいもの。若者が手を伸ばし始めていることからも、クルージングの根強い人気の裏側にあるのは、単なるバブル期への郷愁だけではなさそうだ。