家電製品の中でにわかに注目を浴びつつあるのがマッサージチェアだ。これまでは高齢者が購入する高価な家電製品というイメージが強かったものの、最近は若い人をターゲットにした手軽な商品が次々と誕生している。これによって市場全体は拡大傾向にある。2009年度の28万台から2010年度は30万台に増える見通しだ。

パナソニックの「マッサージソファ」は若い女性を中心に人気がある

 市場の牽引役となったのが、パナソニックが昨年発売した「マッサージソファEP-MS40」だ。

 もともとこの商品は若い女性がマッサージ専門店に足繁く通う姿にヒントを得て、若い層をターゲットに開発が進められた。だが、そんなターゲットにとって購入をためらう最大の要因が、置き場所だった。従来のマッサージチェアだと、大きくて邪魔になり、部屋の雰囲気も壊れてしまう。

 そこでリビングに違和感なく置いてもらうために、様々な工夫を施した。一見すると、普通のソファにしか見えない。背の高さは85cmと、一般的なソファとほぼ同じ高さなので、ソファの隣に置いても邪魔になることはない。スペースが余分に必要になる、リクライニング機能はあえて搭載しなかった。座るだけで、十分体が伸ばせるような設計にしてある。

 デザインにもこだわった。ソファ本体も白や黒だけでなく、ブルーや黄色といったカラフルな色を用意したうえに、14種類のカバーを販売している。カバーによって、部屋の雰囲気を変えることもできる。「購入者の4人に1人がカバーを購入していく」という人気ぶりだ。

 店頭では20万円前後で販売されていて、従来品の約半額。狙い通り若い女性を中心に支持を広げている。

 デザインにこだわったマッサージチェアはほかにも続々と登場している。

著名デザイナーを起用

フジ医療器の「KEN OKUYAMAモデル」は丸みのあるデザインが特徴

 マッサージチェア最大手、フジ医療器が9月に発売したのは、世界的な工業デザイナー、奥山清行氏が手がけた「KEN OKUYAMA(ケン・オクヤマ)モデル」だ。奥山氏自身もマッサージチェアの愛用者ということから、共同開発が始まった。ぬいぐるみのテディベアをイメージしたというこのマッサージチェアは丸みのあるデザインが特徴だ。マッサージをしない時は、まさにおしゃれな家具の佇まいだ。

 パナソニックの商品と同様に、設置スペースと価格に配慮した。最上位の機種に比べマッサージの種類は絞り、価格を抑えた。20万円前後で購入できる。さらに設置スペースも従来品よりも、約2割小さくするようにした。

 同様に著名デザイナーを起用したのがファミリー。シャープの液晶テレビ「アクオス」を手がけた喜多俊之氏がデザインを担当した「ファミリーイナダチェア yUMEROBO(ユメロボ) FIC-R100」を4月に発売した。革張りで、足置きの側面につけたLED(発光ダイオード)が幻想的に光る。価格は46万円と高めだが、「くつろぎ効果が非常に高い」と担当者は自信を見せる。

 若者の巣ごもり傾向は、年々加速している。外で遊ばなくなった分、家の中では少しだけ贅沢したい。疲れも癒やせれば一石二鳥。マッサージチェア人気はそんな若者の心理を代弁しているようだ。