「セミコン・ジャパン2009」(12月2~4日,幕張メッセ)の高等専門学校(高専)特設ブース「The高専@SEMICON Japan 2009」に,三つの研究室が大挙して参加し,盛りだくさんの成果を発表したのが,高知工業高等専門学校だ。昨年も参加した池上研究室に加え,芝研究室,山口研究室が新たに参加した。その内容は,半導体プロセス,ユーザー・インタフェース,ソフトウエアといろいろだ。各研究室が発表した成果を順に紹介する。

レーザー蒸着,直接プリント,水中レーザー加工の成果を披露

 電気情報工学科准教授の池上浩先生が率いる池上研究室は,(1)近接レーザー蒸着,(2)Si薄膜直接プリント,(3)水中レーザー加工という,3種類の多結晶Si薄膜直接パターン形成技術の研究成果を展示した。

近接レーザー蒸着法(高知高専のデータ)
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 (1)の近接レーザー蒸着法は,Si基板表面の厚さ50nmのアモルファスSi薄膜にレーザーを照射し,アモルファスSiを溶融・蒸発させ,アモルファスSi薄膜との間に約150nmのギャップを空けて設置した合成石英基板上に多結晶Si薄膜を蒸着する方法である。レーザーを照射したところだけ,多結晶Siが蒸着される。結晶化のためのアニールや,パターニングのためのリソグラフィとエッチングの工程を省くことができる。この技術を研究する専攻科2年の谷真衣さんは,7月の国際会議「AM-FPD」でも発表を行い,「Student Paper Award」を受賞した。

 ただ,この技術は,スループットやアモルファスSiと石英基板とのギャップ制御といった課題がある。これらの課題を解決しようと考えて開発したのが,(2)のSi薄膜直接プリントである。

 Si薄膜直接プリントは,基板にSi薄膜を形成し,テープを使って不要なSi薄膜をはがしてしまう方法である。まず,基板上に中間層として“機械的に脆弱な層”を形成し,さらにその上にアモルファスSiを成膜する。次に,多結晶Si薄膜パターンとする部分にレーザーを照射し,中間層を固化しつつ,アモルファスSiを結晶化する。最後に,上からテープを張ってはがすと,中間層が固化した部分だけ基板に張り付いたまま,多結晶Si薄膜と共に残る。レーザー照射の速度が,ほぼプロセス速度であるという。実際にプリントしたSi薄膜をセミコン・ジャパン内のブースに持ち込み,光学顕微鏡像を披露していた。この技術を研究しているのは,電気情報工学科5年の清岡雅弘さんだ。技術の詳細については,2010年に学会発表する予定だという。

水中レーザー加工技術を研究している福留誉司さん
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 (3)の水中レーザー加工技術は,2008年に続けての展示となった(Tech-On!関連記事)。昨年はLSIのチップ分割や穴加工を想定していたが,今回は太陽電池セルのSi領域分離などの用途を狙い,ガラス基板上のアモルファスSi薄膜をきれいにパターン加工することを目指した。Si薄膜を除去したい部分に,基板背面からレーザーを照射する。基板表面に純水を流すことで,加工くずが流水によって除去され,スムーズなエッジ形状を実現できたという。展示ブースでは,この技術を研究する専攻科1年の福留誉司さんが加工サンプルを持ち込み,光学顕微鏡像を披露していた。