メガソーラー探訪

「1ホールで1MW」の常識を超えた、三重最大の「18ホール・51MW」メガソーラー

買収案件に見る、オリックスの開発・運用方針

  • 加藤 伸一=日経BPクリーンテック研究所
  • 2017/03/21 05:30

 三重県津市の山あいに、出力約51MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)「オリックス51M津メガソーラー発電所」がある(図1)。稼働済みのメガソーラーとしては、三重県で最大規模となる。

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図1●ゴルフ場跡を活用したメガソーラー、三重県で最大規模
「オリックス51M津メガソーラー発電所」(出所:日経BP)
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 津市白山町にある旧ゴルフ場「トーシンレイクウッドゴルフクラブ」の跡地を活用した。同ゴルフ場は、2014年1月に営業を終え、閉鎖した。

 閉鎖時には、メガソーラーの開発が決まっており、開発を手掛けていた企業に土地や関連施設が売却された。オリックスが、この開発企業からプロジェクトを引き継いで事業化した。発電事業者は、特定目的会社(SPC)の「ORソーラー・エイト合同会社」となる。

 国内のメガソーラーでは、EPC(設計・調達・施工)サービスや発電システムなどを手掛ける企業が、開発を手掛けることも多い。そのまま自社で運営する場合のほか、資金面などの理由で、プロジェクトの売却を想定しながら開発する場合もある。投資負担を減らすため、他社との合弁で事業化することもある。

 当初、開発を手掛けたEPCサービス企業や発電システムメーカーにとっては、施工の受注や製品の納入などが主目的となる。

 津市のメガソーラーの場合、当初はEPCサービスなどを手掛ける企業がプロジェクトを開発していた。土地の購入、経済産業省による設備認定、電力会社からの連系承諾が揃った後の段階で、オリックスがプロジェクトを購入し、開発を引き継いだ。

 設計・施工、O&M(運用・保守)を、中部電力グループの電力設備工事会社であるトーエネックが担当することも決まっていた。設計も進みつつある段階だった。元々、開発していた企業は、トーエネックの発注により、施工の一部を担った。

標準仕様との合致もプロジェクト買収の条件

 オリックスが開発・運営するメガソーラーでは、自社で当初から開発した案件のほか、今回のように開発中のプロジェクトを購入し、事業化した案件もある。資金力や開発・運営能力を評価され、売り込みを受けることも多い。

 津市のプロジェクトは、日射の良さと規模の大きさに加え、特に、三つの点が魅力だったという。

 一つ目は、敷地内に特別高圧送電線の鉄塔があり、そこで連系できることである(図2)。連系点までの距離が離れている場合に比べ、連系費用が安くあがる。

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図2●敷地内に連系点があった
上の画像の中央奥に見える鉄塔が連系点。鉄塔の増強工事は必要となったが、特高案件の中では連系費は比較的安い(出所:日経BP)
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 二つ目は、元の開発企業が土地を取得しており、土地の権利関係がシンプルだったこと。メガソーラーでは、数多くの地権者の取りまとめに時間や労力を要し、着工までに多くの時間を費やすことも多い。

 三つ目は、設計・施工とO&Mをトーエネックが担当することだった。地元で電気設備の施工や運用に実績が多い上、連系先となる中部電力グループであることも利点となる。

 オリックスでは、メガソーラー開発において、事業性のほか、設備などに関する標準的な仕様を定めている。EPCやO&Mに関連するものが多い。「発電さえすればよいのではなく、設備や運営に関し、一定の基準に合致したメガソーラーを作り上げ、運用している」と強調する。

 他社による案件を買い取り、開発を引き継ぐ際には、この標準的な仕様にどこまで合致するのかがポイントの一つとなる。現時点ですべて満たさなくても、開発の過程で許容できる範囲に収められるかどうか、買収交渉時に見極める。

 例えば、EPCサービスや発電設備などに、何らかの制約のある場合、それが許容可能か、許容できないなら、変更可能かどうか、などである。ここは、できるだけ柔軟性の高い方が望ましい。

 津市のメガソーラープロジェクトは、こうした要求を満たす案件だった。オリックスによると、若干の変更はあったものの、ほぼ元の計画を生かして開発を続けた。

 太陽光パネル出力は51.03MW、連系出力は42MWとなる。

 初年度の年間発電量は5781万5692kWhとなり、買取価格は36円/kWh(税抜き)で、中部電力に売電している。

 事業費は、プロジェクトファイナンスによる融資で調達した。調達額や融資元については、非公開とする。

 太陽光パネルは東芝製、パワーコンディショナー(PCS)は東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を採用した。

 PCSについては、オリックスのメガソーラーでは、TMEIC製の採用が多い。性能や信頼性などを評価しているほか、共通化することで、多くのメガソーラーを運用していく中で、部品の交換などを含む保守を適正化しやすい利点があるとしている。

一般的なゴルフ場案件の3倍のパネルを配置

 ゴルフ場跡をメガソーラー用地として活用する場合、一般的に、ゴルフ場の開発時に得た林地開発の許可の範囲内で、発電設備を設置する場合が多い(図3)。新たに開発許可を取得するより、「用途変更」で済ませる方が開発期間を短縮しやすい。

図3●コース内の池を残して太陽光パネルを設置
元の地形を生かしながら開発(出所:日経BP)
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 すでに開発済みの範囲内になるため、土砂を大幅に動かすような大規模な造成がなく、排水などの設備もゴルフ場当時の施設を利用するなど、開発費を抑えながら、大規模な太陽光発電システムを導入できる利点もある。

 ただし、その場合、パネルを並べるエリアが、フェアウエイなどに限られることになる。ゴルフ場時代の残置森林や急斜面などの多くは、一部の樹木を伐採することはあっても、ほぼそのまま残すため、ほとんどパネルを並べられない。

 こうした事情から、ゴルフ場跡地をメガソーラーにする場合、一般的には「1ホール当たり出力1MW」がパネル設置容量の目安となっている。

 ところが、津のメガソーラーは、18ホールのゴルフ場だったにも関わらず、出力約51MWと、一般的な場合に比べて、3倍近い容量のパネルを並べた(図4)。

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図4●「1ホールあたり出力1MW」の常識を超える配置
ゴルフ場の構造がパネル設置に適していた(出所:上はオリックス、下は日経BP)
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 これは、もともとのゴルフ場の構造による利点だった。18ホールのフェアウエイの多くは、山林の中に段々畑のように開発され、ホール間の距離はそれほど離れていなかった。

 そのため、フェアウエイ間にパネルを置けない急な法面や残置森林が小さく、結果的に多くのパネルを並べられた。また、クラブハウスや駐車場などの跡地にも、パネルを設置した。

 さらに、アレイ(太陽光パネルを架台に固定する単位)同士の間は、影のかからない範囲で最短まで狭めた(図5)。

図5●傾斜の斜度などによってアレイごとに間隔を細かく調整
手前側と中央部で間隔が異なるのがわかる(出所:日経BP)
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 間隔は、最小で50cmの場所もある。平地に近い場所では約1.6mを基本とする。設置場所の傾斜角度などによって、影の長さが異なるため、アレイごとに間隔を細かく変えている。

 こうした配置によって、約113.5万m2の土地に、20万4120枚のパネルを並べた。

斜面への設置に向く独自の手法

 大規模な造成を抑えるため、パネルは、起伏のある斜面に土地なりに並べることが多くなる。こうした場合でも、効率的に施工できる手法として、杭基礎とアルミ材による架台を採用した(図6)。

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図6●斜面に向くトーエネックの「FX鋼管基礎」を採用
長さ約2mの支持用鋼管を2本、地中でクロスさせてX字型に固定(出所:日経BP)
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 トーエネックの開発した「FX鋼管基礎」である。重機による掘削が不要で、打設機で鋼管を打ち込むだけのため、斜面に向く。

 長さ約2mの支持用鋼管を2本、地中でクロスさせ、X字型に固定することで、引き抜き強度を確保した。

 高さは、基礎側で調整した。地面からパネル最低部の高さは、設置場所の状況によって異なる。最も低い場所では、約30cmと一般的なメガソーラーに比べてかなり低い。

 設置角は、南向き10度にした。東西方向には、斜面の傾きに合わせて設置した。

 アルミ架台は、軽量のため、斜面での作業の軽減に効果があった。

 この手法では設置できない場所には、二つの手法を使った。一つは、地中に岩石がある場合。長さ2mの支持用鋼管が、地中の岩石にぶつかって途中までしか打ち込めないと、必要な強度を得られない恐れがある。

 深さ1m以上、支持用鋼管を打ち込めない場合、地表部分の鋼管を切って高さを揃えた上、地中の打ち込み不足分は、鋼管内から削孔し、そこに鉄筋を打ち込んで周囲をセメントミルクで固めた。

 もう一つは、駐車場やクラブハウスの跡など、地面がアスファルト舗装されている場所である(図7)。この場合には、コンクリートによる基礎を使った。

図7●アスファルト舗装されている場所では置き基礎
クラブハウスや駐車場の跡で活用(出所:日経BP)
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5人が常駐するO&M

 O&Mは、トーエネックの担当者が2人、さらに、協力会社から3人が常駐している。トーエネックの担当者のうち1人は、第2種の電気主任技術者の資格を持ち、このメガソーラーの専任となっている。

 パネル出力が51MWという規模まで大きくなると、経済性からも、こうした常駐による管理が可能になるという。

 売電ロスを最小限に留める対策の1つとして、停止したPCSの迅速な復旧がある。連系する送電線の停電や、周辺地域への落雷によってPCSが停止することもある。例えば、夜間に停止を把握した場合、夜明けまでに電力会社の確認を経て復旧させれば、売電ロスを回避できる。

 敷地内の通路などには、各所で反射板が目に付く(図8)。夜間の復旧や点検に備えたものだ。定期点検の中にも、夜間に実施した方がよい項目もあるという。

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図8●反射板がいたるところに
夜間の復旧や点検に備えた(出所:日経BP)
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 日常的なO&M作業の基本は、巡回による目視点検である。鳥のフンやその他の原因によって、太陽光パネルの表面が汚れていることもある。

 汚れを見つけた場合、緊急性のない程度であれば、場所を記録しておき、雨の日にまとめて洗浄している。雨が降っていれば、わざわざ水を用意しなくても、雨水を使って洗浄できる。

 作業として多いのは、刈り払い機による除草という。雑草が伸びやすい時期には、区画ごとに刈り進めていっても、他の区画を刈っている間にまた伸びてくる。3月から11月の間は、草刈りを続ける必要があると見ている。

 メガソーラーの除草を効率化する方法として、乗用型草刈機を活用する例も増えているが、同発電所の場合、起伏や斜面が多く、アレイ間が狭いことから、活用が難しいという。

 発電量の監視も、重要な任務となっている。例えば、太陽光パネルを15枚、直列に接続したストリングの単位で発電状況(電圧と電流)を確認している。このデータは、遠隔監視システムを使って把握している。

 こうしたO&Mについても、オリックスでは、標準的な仕様を定めている。津のメガソーラーの場合、トーエネックと協議して作業の内容や計画などを決めている。

O&Mのあり方は、年月とともに変わる

 オリックスでは、開発したメガソーラーの多くが売電を開始し、運転期間が長くなるにつれ、運用のあり方や手法を変えていくことを検討している。

 売電ロスを最小化して投資効率を最大化するという目的は同じでも、稼働後1年と5年、10年とでは、求められるO&Mは変わると予想している。例えば、交換の想定される設備や部材、スペア備蓄の考え方、遠隔監視の仕組みやデータの分析手法などである。

 ただし、売電ロスを未然に防ぐ予防保全の考え方は、常に重要という。

 例えば、カラスが石を落としてパネルが割れた場合、発電量自体は落ちないことも多く、製品不良ではないので、メーカーの保証対象とはならない。だが、オリックスでは将来、発電ロスにつながる恐れがあるほか、何らかの災害の原因となることから、交換している。

 交換費用は保険で賄うが、こうした適用が続けば、保険代が高くなり、事業性を損なっていく。

 このため、予防保全として、さまざまなカラス撃退法を検討している。この一環として、テグスを張っているメガソーラーもあるという。

 また、さらに発電開始から月日が経ち、パネルの発電量が下がってきた場合の対応も、検討の余地がある。パネルメーカーは「経年劣化」と称し、年数ごとの発電量の低下具合を定め、それを下回った製品を保証の対象として交換する。

 この保証の対象外でも、一定以上に出力が低下した場合、そのパネルを交換して発電量を増やした方が事業性の高まる場合もある。

 この選択について、オリックスでは、その時点でのパネル価格によって検討することになるだろうとしている。現在のところ、運営しているメガソーラーにおいて、こうした劣化による交換はないという。

 次回(3月28日公開予定)は、同発電所での竣工前検査(使用前自主検査)について紹介する。

●発電所の概要

発電所名オリックス51M津メガソーラー発電所
所在地 三重県津市白山町三ヶ野3209ほか
敷地面積約113万5001m2(東京ドーム約25個分)
発電事業者ORソーラー・エイト合同会社(オリックスによる特定目的会社)
太陽光パネル出力 51.030MW
連系出力 42MW
初年度年間発電量5781万5692kWh(一般家庭約1万6060世帯の消費電力に相当)
設計・施工トーエネック
太陽光パネル東芝製(20万4120枚)
パワーコンディショナー(PCS)東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製
O&M(運用・保守)トーエネック
運転開始日2016年5月10日
売電価格36円/kWh(税抜き)
売電先中部電力