エディターズ・ノート

大型液晶パネル出荷数で世界一になった中国メーカー

  • 田中 直樹
  • 2017/03/21 05:00

 「BOE」という会社をご存じですか?

 2017年1月、大型TFT液晶パネル出荷数で初めて世界首位となった中国のパネルメーカーです(関連記事:「中国BOEが大型パネル出荷数で初の首位、IHS Markit調べ」)。液晶といえば、「シャープ」や韓国の「Samsung」「LG」といった企業名を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、今回のランキングで2位はLGで、Samsungは5位、シャープはトップ5に入っていません。BOEはこうした名だたる企業を抑えて、1位を獲得したわけです。液晶業界でも、半導体と同様に“プレーヤーの交代”が顕在化しているのです(関連記事:半導体、空前の活況の背景)。

 今後普及が進むと予想される「65型8K」の超大画面・超高精細テレビの市場。この新しい市場で、BOEを始めとする中国企業が、シャープやSamsung、LGに取って代わる可能性は高い。それどころか、今後の世界の液晶事業の主導権を握る可能性すらあります。積極果敢な投資計画のもとで、第8.5世代以上の大型テレビ用の新工場を矢継ぎ早に建設しており、競合他社を圧倒できる量産規模を持つようになるからです。

 BOEは、2014年第1四半期に安徽省合肥市、2015年第1四半期に四川省重慶市で、それぞれ第8.5世代工場を稼働させました。さらに、2017年は福建省福州市で第8.5世代工場、2018年は合肥市で第10.5世代工場を稼働させる計画です。一連の積極果敢な投資が、BOEを液晶世界一の座に押し上げつつあります。

 合肥市の第10.5世代工場は2015年12月2日に着工し、現在建設中です。敷地面積は東京ドーム17個分。総投資額は400億人民元(約7000億円)で、2018年第2四半期に生産を開始する計画です。最大の特徴は、3370mm×2940mmという世界最大寸法のガラス基板を使うこと。特に75型や65型の液晶パネルの生産効率が高まります。これにより「65型8K」の超大画面・超高精細パネルの製造コスト力で競合他社を圧倒する考えです。

液晶の設備投資を牽引する中国の大型テレビ市場

 そんなに液晶パネルの生産能力を増やして、供給過剰に陥らないのか。自分の首を絞めることにならないのか。そんな疑問が湧いてきますが、BOEは逆に「液晶パネルの生産能力の増強が今後も必要」と考えています。

 その理由の1つが、65型8Kテレビの普及に象徴される、液晶テレビの画面サイズの大型化です。「液晶テレビの平均サイズが1インチ大きくなるインパクトはとても大きい。2億台のテレビ市場が新たに生まれることに匹敵します。第8世代の液晶パネル工場が新たに1本必要になります。液晶テレビの画面サイズは、今は40型が中心ですが、これが50型、そして60型へと大型化していくでしょう。2018~2020年には65型の需要もかなり増えるとみています」(中国BOE社副総経理/BOEジャパン社長の久保島力氏)。

 果たして、65型8Kテレビは本当に売れるのか。「そもそも家に入らないじゃないか」という話を、日本ではよく聞きます。

 「世界のテレビは、65型8Kが普通の時代になる」とそんな声を一刀両断するのが、東海東京調査センターのアナリストの石野雅彦氏です。理由は明快で「液晶の今後の設備投資を牽引するのは中国の大型テレビ市場。その中国で『65型8K』の液晶テレビが売れると目されている」(同氏)。

 プレーヤーが大幅に入れ替わり、市場が変革しつつあります。シャープやSamsung、LGといったこれまでの主役企業の動向を知るだけでは、将来を見誤る危険があります。BOEのような“新プレーヤー”が何を考えているのか。彼らの動きに注目するのが極めて重要になってきました。

 こんな危機感から今月末、2017年3月28日に緊急セミナーを企画しました。「自動運転やAIを牽引する半導体・ディスプレー新時代」。ご紹介したディスプレー業界の新プレーヤー「BOE」に加え、半導体業界の新プレーヤーである「ARM」や「Xilinx」のキーパーソンを一挙に集め、各社の戦略を語ってもらいます。半導体・ディスプレー業界に詳しいアナリストの石野雅彦氏(東海東京調査センター)と大山聡氏(IHSテクノロジー)にもご登壇いただき、詳しい分析や、今後の展開についてたっぷり語っていただきます。年度末でお忙しい折ですが、是非ともご参加下さい。