九電が保有・運営する大型水力発電所
九電が保有・運営する大型水力発電所
(出所:九州電力)
[画像のクリックで拡大表示]
九電が保有・運営する地熱発電所
九電が保有・運営する地熱発電所
(出所:九州電力)
[画像のクリックで拡大表示]

 九州電力は9月25日、再生可能エネルギーを活用した法人顧客向け電力メニュー「再エネECOプラン」を創設し、同日から受付開始したと発表した。顧客に供給する電気の全部または一部に対して、同社の持つ地熱と水力発電に由来する電力を提供する。

 特別高圧および高圧受電する需要家を対象とする。「地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)」の「温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度」に基づき、顧客は電気のCO2排出係数をゼロとしてCO2排出量を算定できる。契約期間は1年間。利用料金は個別見積もりで、電気料金に環境価値分が加算される。

 また九電では、今回の「再エネECOプラン」の販売に伴い、それ以外の電力メニューのCO2排出係数が増加することを防ぐため、同プランの販売量に相当する非化石証書を購入する。それによって、従来メニューのCO2排出係数には影響が出ないようにするとしている。

 九州電力では、水力発電所は九州各地135カ所に合計128万kW、地熱発電所は4カ所に合計21万kWを保有する。地熱発電では、国内の発電設備の約4割を占める。

 九電の電源構成(2017年度実績)は、固定価格買取制度(FIT)によらない水力が4%、地熱が1%を占め、発電量は合計約50億kWh。このほかの電源は火力が48%、原子力が16%、FITによる再エネ電力が11%、揚水が1%、FIT以外の太陽光・風力・バイオマス発電が0.02%、他社購入などが19%となっている。

 大型水力発電所の電気を活用した「再エネ100%プラン」に関しては、2017年春に東京電力エナジーパートナーが、法人向けに「アクアプレミアム」、家庭向けに「アクアエナジー100」を商品化。四国電力が今年8月、「再エネプレミアムプラン」を発表した。いずれも環境価値を持ちCO2排出係数ゼロとなる。

 ただ、旧一般電気事業者の持つ大型水力や地熱、原子力発電の環境価値(CO2ゼロ)に関しては、新電力とのイコールフッティングの観点から、その位置づけを巡って議論もある。すでにFIT電気の環境価値に関しては、電気とは分離し、非化石価値買取市場での入札が始まっているが、非FIT電源である大型水力や地熱の環境価値の扱いに関しては、今後、審議会などでの議論を通じてその帰属が整理されることになりそうだ。

 電力システム改革を議論する審議会の委員の中には、「総括原価方式の体制下で建設してきた大型水力や地熱に関しては、発電所の所有者に属するものではなく、電気と分離して取り引きし、売却益は旧一般電気事業者に入らない形にすべき」との意見もある。

 九電の場合、新メニューで販売した水力と地熱の環境価値を非化石証書の購入で補うとしていることから、新メニューの電気料金に加算される環境価値(収入増)分から非化石証書の購入費用を引いた額が環境価値による収益になる。