南相馬原町東太陽光発電所
南相馬原町東太陽光発電所
(出所:住友商事)
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竣工式の様子
竣工式の様子
(出所:日経BP)
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 住友商事は1月24日、福島県南相馬市で、太陽光パネルの出力32.3MW、連系出力24MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)「南相馬原町東太陽光発電所」の竣工式を開催した。 2017年1月に着工し、2018年12月10日に商用運転を開始していた。

 同発電所は、東日本大震災によって津波に被災した海岸地域の農地や居住地域など約50haを活用した。防災集団移転促進事業と土地改良事業法に基づき、南相馬市が使用収益権を取得した原町東地区に建設した。

 年間37GWhの発電量を見込み、これは一般家庭約1万世帯分に相当する。固定価格買取制度(FIT)に基づく売電単価は40円/kWhとなる。

 事業主体は、SPC(特定目的会社)のソーラーパワー南相馬・原町で、同社には住友商事が80%、住友商事東北が20%を出資した。みずほ銀行をアレンジャーとしたプロジェクトファイナンスを組成し、SPCに対して融資した。

 EPC(設計・調達・施工)サービスは、東芝エネルギーシステムズと大成建設が担当した。太陽光パネルは東芝製(270W/枚・11万9592枚)、パワーコンディショナー(PCS)は東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製(750kW機・32基)を採用した。東芝エネルギーシステムズは、稼働後のO&M(運営・保守)サービスも担当する。

 南相馬市は、2012年10月に「南相馬市再生可能エネルギー推進ビジョン」を策定し、2030年に市内の消費電力量に対する再生可能エネルギーの発電量の比率を100%にする目標を掲げている。 今回、「南相馬原町東太陽光発電所」の稼働により、再エネ比率は、約50%となった。

 竣工式で挨拶した南相馬市の松浦隆太副市長は、「津波の被害が甚大だったエリアをクリーンンエネルギーの生産拠点として有効活用でき、たいへん感謝している。市の掲げる再エネ推進ビジョンの達成に貢献してくれるほか、今後は、メガソーラーを観光資源の1つとして位置付けていきたい」と述べた。

 住友商事・国内再生可能エネルギー事業チーム長で、ソーラーパワー南相馬・原町の代表を務める平野貴之氏は、「用地の集約、軟弱地盤など、事業化までにはいつものハードルがあったが、関係者の方々の尽力によって完成に至った」と述べた。

 事業用地は、津波のリスクが高く、当初、損害保険の対象にならずプロジェクトファイナンスの組成が難しいことや、元は水田のため地盤が軟弱などの課題があった。パネルの設置高を50~70cm確保することや、大成建設の開発した簡易斜杭基礎工法を採用することなどでこうした課題を克服したという。

 住友商事は2018年3月20日に同じ南相馬市に、太陽光パネル出力59.9MW(連系出力45.5MW)のメガソーラー「南相馬真野右田海老太陽光発電所」を稼働しており、両サイトを合わせると、90MWを超える規模になる。両発電所は、同じファイナンススキーム、設計・施工会社により、一体的に開発し、建設した(関連記事:福島最大60MWのメガソーラー、津波被災地でも「プロファイ」)。

 同社は、世界各地で再エネ発電の開発・運営を進めており、持分発電容量は1GW(1000MW)に達するという。住友商事東北は、今回のメガソーラーのほか、山形県酒田市でバイオマス発電事業にも取り組んでいる。