利き手ではない方の手の役割を担う、第2の義手

 2016年11月8日から14日までの7日間、東京・渋谷にあるヒカリエ「8/(ハチ)」で開催された超福祉展では、「カッコいい」「カワイイ」「ヤバイ」といった、従来の“隠す”福祉機器のイメージを一新させる“見せる”“思わず使ってみたくなる”福祉機器が数多く並んだ。

 展示された福祉機器の1つに「Finch(フィンチ)」という電動義手があった。Finchは「日常生活の道具として気軽に使える電動義手」をテーマに、ダイヤ工業(岡山県岡山市)が、大阪工業大学の吉川雅博氏(工学部 ロボット工学科 特任准教授)、河島則天氏(国立リハビリテーションセンター研究所 神経筋機能系障害研究室 室長)、山中俊治氏(東京大学/慶應義塾大学)と共同開発した製品だ。

Finch。見た目も使い方もシンプルに、必要な機能を絞り込んでいる
Finch。見た目も使い方もシンプルに、必要な機能を絞り込んでいる
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 Finchは“手に入れたその日から容易に気軽に使える、日常生活のツール”“第2の義手”を目指し誕生した。日常生活における「利き手ではない方の手」の役割・機能を分析し、構造はシンプルながらも、機能性と操作性の高さを実現させた。

 本来、義手を作る際には採型し、オーダーメイドで制作するのが一般的である。Finchでは前腕最大囲に合わせて、ソケットフレームを4サイズから選択する仕組みにした。ソケットフレームに被せる布製サポータのバンドを締め付け調整すれば、容易に装着ができ、時間と手間を掛けなくても、すぐに利用できることを目指している。

操作性に優れた“3本指”の義手

 Finchは開く・閉じるといった日常で必要な動作にフォーカスを当て、シンプルかつ使いやすくなっている。その特徴の1つが「対向3指」であることだ。3本の指を対向に配置することで、500g程度であれば多様な形状の物をつかんだり、移動させたりできる。5本指の方が人間の手に近く見えるが、上下や左右など様々な角度から物をつかむという機能を考えると3本あれば十分にこなせるという。

 2本指では1本が外れてしまったら物を落としてしまうし、安定もしない。物をつかむ角度にも制限が出てくるため、体ごとまわすような不自然な姿勢になってしまう。3本あることで、意識しなくても自然な姿勢で物をつかめるのだ。

 指にはバネが内蔵されていて、従来の電動義手より細かな作業を得意とする。実際、超福祉展の初日に行われたFinchのデモンストレーションでは、ユーザーが腕時計を外す、積み木をさまざまな角度からつかんで移動させる、といった動作を見せた。指先の部分はシリコンが用いられていて、指サックをはめたような状態になっている。これにより物をつかんだり抑えたりしたときに滑りにくくなる。

Finchを使って積み木を持ち上げる様子
Finchを使って積み木を持ち上げる様子
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