企業を訪問すると異常に気付けない職場にときどき出会う。外部の人間から見れば「この状態を異常と思わないの?」という状態なのだが、社内にいる人は異常を異常と感じていない。

 代表的なのが、不良が山のように積み上がっている生産現場だ。特にリサイクルできる素材を使っている場合は、「不良が出てもリサイクルすればよい」という意識が働くためか、不良の山に対して異常を感じなくなっていることがある。いつの間にか、「こんなものだろう」という感覚に陥っている。

 しかし、外部の人間から見れば、「これだけ不良が出ているのに対策を打っていないのはどういうこと?」と思うのは当然だ。リサイクルできないにもかかわらず大量な不良が当たり前になっている職場もある。

 工程の中で手直しが当然となっている生産現場も見かける。通常なら、すぐに生産を停めて対策を打つべきなのに、それを放置し、また大変なことが起こっているという意識もない。異常を異常として感じられなければ改善は進まない。

何が正常か明確になっているか

 なぜこのような状態になってしまうのだろうか。それはそもそも正常な状態を分かっていないからだ。正常を知らなければ異常であることには気付きようがない。

 異常と気付けるようにするには、これが正常ということが誰もが分かる職場にする必要がある。そのためには、何が正常で何が異常かの「見える化」が大切で、異常と判断する基準を明確にしておかなくてはならない。基準がないと異常かどうかを判断できないからだ。

 みずから改善が進む職場は、徹底した「見える化」に取り組んでいる。見える化とは、まさに問題が見える職場や現場にするということ。問題が見えれば、それに気付いて皆が改善を進められる。