工場を訪ねると、何かしらのスローガンが掲げられているのを見かけることが多い。よくあるのは、「本年度のスローガン」というように、その年度の方針を踏まえて行動指針や活動視点を示したようなものだ。ところが、現場で社員の皆さんから話を聞いていると、「あのスローガンはいったい何なのか」と言いたくなることがある。

看板倒れになっていないか

 大抵の企業は、年度始めにその年度の方針や取り組み計画を従業員に説明する場を設ける。昨年度の反省や経営環境の変化、中期経営計画を踏まえて、その年度に取り組むべき事は何かを説明する。

 スローガンには、それを実現するために従業員に意識して行動して欲しいことを掲げているはず。ところが、その意味や思いが従業員にしっかりと理解されておらず、「そのように行動を変えよう」とか「そのように意識して推進しよう」という風には捉えられていないのである。結局、現場を見ていると従来と同じ姿勢のままだと感じることが多いのだ。

 例えば、工場の現場でよくみる「整理・整頓」と、「安全第一」という大きな看板。面白いのは、このような看板が掲げられているところほど、整理・整頓はできていないこと。当然、怪我も多い。“できていないからこそ掲げている”という言い分もあるだろうが、看板やスローガンだけを掲げても中身が伴わなければ、「うちはスローガンを掲げてもできない会社です」と言っているようなものだ。

形だけで理解されていなけりゃ意味がない

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 さて、今回本コラムでなぜスローガンのことなど持ち出したのか。それは、看板やスローガンを掲げても、組織全体に考え方を浸透・徹底させることは難しいということを言いたかったからである。

 実際、「整理・整頓」のような、生産現場なら誰もが知っていて当然のことについても、現場の従業員らはその真の意味や重要性をどれだけ理解できているだろうか。年度のスローガンについても、なぜそれを意識する必要があるのかを、どれだけの人が理解して自分のものにしているだろうか。