事業をいかに存続発展させるかが経営者の役割である。顧客や出資者への責任を果たすとともに、従業員の生活を守るには、事業を存続発展させていく必要がある。言い換えれば、経営者はリレーランナーのごとく、次の人に経営というバトンを確実に渡していかなければならない。

 そういう意味で、後継者を誰にするのか、後継者をどう育成するかに加えて、適切な引き継ぎをすることが非常に大切だ。特に海外拠点の場合、後継者が現地事情に対する理解が浅いことも多く、着任後に大きな問題が生じる場合がある。

 日本国内ならば、分からないことは前任者に聞けば済むが、海外の場合はすぐに聞ける環境にはない。それだけに、いかに適切な引き継ぎをするかが重要となるのだ。日本と異なる文化や法律の下での事業運営である以上、日本の常識に基づいた判断は誤りということもある。引き継ぎの際は、その国ならではの事情を含めて行うことが肝要だ。

引き継ぎ事項は明確か

 引き継ぐべき事項をあらかじめ明確にしておくことも忘れてはならない(図)。筆者の支援先では、引き継ぎ項目のチェックリストを作成し、実際の引き継ぎ時にはそれにチェックをした上で本社の担当部門に提出してもらうことにしている。

 忙しい中での引き継ぎなので、きちんとした引継書を作成している時間など無いことが多い。従って、引継書の作成ということより、引き継ぐべきことが、どんな形であれ抜けなく引き継げたかをチェックすることが大切なのだ。

図 引き継ぎ書に盛り込むべき項目例
[画像のクリックで拡大表示]
図 引き継ぎ書に盛り込むべき項目例