Tobiiグラスのヘッド・ユニットとデータの記録装置。ヘッド・ユニットに,視野および瞳を撮影する赤外線ライトとカメラがある。データ記録装置の寸法は124mm×83mm×35mm。
Tobiiグラスのヘッド・ユニットとデータの記録装置。ヘッド・ユニットに,視野および瞳を撮影する赤外線ライトとカメラがある。データ記録装置の寸法は124mm×83mm×35mm。
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別の角度から見たヘッド・ユニット
別の角度から見たヘッド・ユニット
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Tobii Technology社の既存の視線追跡システム。ディスプレイの下部に赤外線ライトとカメラを実装している。
Tobii Technology社の既存の視線追跡システム。ディスプレイの下部に赤外線ライトとカメラを実装している。
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既存の視線追跡システムで,キャリブレーションをしている様子。画面の白,またはピンク色の点の動きを数秒間目で追うだけでよいという。
既存の視線追跡システムで,キャリブレーションをしている様子。画面の白,またはピンク色の点の動きを数秒間目で追うだけでよいという。
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 スウェーデンTobii Technology ABの日本法人トビー・テクノロジー・ジャパンは,視線追跡機能を実装したメガネ型の次世代モバイル・アイトラッカー・システム「Tobiiグラス」を2010年9月に発売する。当初の発売価格はハードウエアが370万円,ソフトウエアが150万円で研究やマーケティング用途向けの製品だが,「3~5年先には量産によって100ドル程度に価格を下げ,パソコンのマウスに代わるようなインタフェースにしたい」(トビー・テクノロジー・ジャパン 代表取締役の石原雅義氏)という。

 Tobii Technology社は,視線追跡機能を備えたディスプレイや専用の赤外線カメラで「世界で5割近いシェアを持つメーカー」(石原氏)。ディスプレイなどに組み込んだ赤外線の照射装置から目に赤外線ライトを当て,目の瞳孔の位置をカメラで撮影し,その映像を解析して瞳孔の向きを検知する,というのが視線追跡の基本的な仕組みである。

 同社は,シェアが高い理由を「(1)±0.5度の精度で視線の位置を追跡できる,(2)追跡可能な条件が幅広い,(3)キャリブレーションが3~5秒で済む,(4)ほぼリアルタイムにデータを解析できるソフトウエアを備えている,(5)製品開発が速い,などの強みが評価されてきた結果」(同社)と主張する。±0.5度の精度は,60cm離れて寸法が1cm角ほどの文字を区別できるほどの分解能に相当する。キャリブレーションは一般には数分かかるが,同社の製品は,ディスプレイに表示された映像を数秒間目で追うだけで可能だという。「メガネを掛けていてもコンタクトをしていてもよく,97~98%の人が利用できる」(石原氏)。

 今回の製品は,メガネ型のヘッド・ユニットと,このメガネとケーブルでつないで,視線のデータを一時的に記録する装置「レコーディング・アシスタント」,およびデータ解析用ソフトウエアから成る。基本的な性能は,同社の既存の製品とほぼ同じ。ただし,キャリブレーションは「15秒ほどかかる」(同社)とやや長めになる。映像のサンプリング・レートは30Hz,データの記録時間は最長70分である。

 ヘッド・ユニットは,赤外線に対して反射率約40%のハーフミラーをレンズの代わりにしたメガネ型のフレームに,赤外線LEDと赤外線カメラを2組組み込んだもの。1組は,ユーザーの視野の撮影に,もう一組はユーザーの瞳の映像をハーフミラーを介して撮影するのに用いる。重さはヘッド・ユニットが100g,レコーディング・アシスタントが205gである。「将来的には,ヘッド・ユニットから無線でパソコンなどに直接データを送れるようにする予定」(石原氏)という。

 現時点ではハードウエアとソフトウエアの価格は計500万円超と高い。ただしこれは,「現時点の出荷量が1000システム/年と少ないため。今後はOEMなどを通じて大幅に出荷規模を拡大し,1システム100米ドルにするのが目標」(石原氏)という。