電気を通す性質と物質同士を固着する性質を併せ持つ導電性接着剤が,ハンダに代わる実装技術として脚光を浴び始めている。2005年1月19日~21日に開催された実装関連の展示会「第34回 インターネプコン・ジャパン」に併設して開かれた導電性接着剤関連のセミナーには,当初の見込みを大幅に上回る聴講者が詰め掛け,座席を臨時に増設するほどの盛況ぶりだった。導電性接着剤の研究者である大阪大学 産業科学研究所 教授の菅沼克昭氏は「導電性接着剤を使いこなすことが,機器の付加価値の向上につながることに,産業界が気付き始めた」と現状を分析する。

 導電性接着剤は,固着を担う樹脂と,導電を担う金属(導電性フィラー)を混合したもの。一般には,エポキシ樹脂とAg(銀)を組み合わせることが多い。研究開発は50年以上も前から続けられていたが,材料技術や信頼性評価技術などの開発が十分でないことから,製品への応用は発光ダイオード(LED)のチップの固定など一部の用途に限られていた。

 この導電性接着剤に対し,エレクトロニクス業界の期待が急速に高まり始めている背景には,Pb(鉛)フリー化の流れがある。導電性接着剤は+300℃程度でも短時間であれば接合を維持することから,Pbフリー化に伴う代替技術が確立していない高温ハンダの代わりになる可能性があるためだ。