「車間距離検知機能を利用した先行車追従システムや衝突軽減システムを,今後5年以内に普及価格帯の車種にも展開していく計画だ」(ある国内大手自動車メーカーの技術者)。現在,高級車向けを中心に30万円前後もするオプション品であるこのシステムを,自動車メーカーは5万円以下に低価格化を進め,小型車にも標準品として搭載する方向で動きだしている。

 車間距離検知機能を使ったシステムは,1998年にDaimlerChrysler社が業界で初めて実用化して以来,今では国内外の自動車メーカーに採用が広まっている。しかし,2005年における同システムの年間出荷台数は,国内外を合わせても10万台に満たない。普及が広まらない最大の理由は,車間距離検知に使うミリ波レーダの価格が高いためである。

 この低空飛行が続いていた市場が,いよいよ拡大期を迎える。自動車メーカーは1990年代前半にABS,1990年代後半にエアバッグ・システム,そして現在は横滑り防止といった車両姿勢制御システムを重要な安全装備と位置付け,標準搭載を進めている。ここに今,先行車追従システムや衝突軽減システムが加わろうとしている。さらに将来,カメラ・システムと組み合わせて歩行者を検知して衝突を回避する,通信機能と併用して自動車同士あるいは自動車と道路との交信によって事故を未然に防ぐ,といったセンサ・フュージョンによる安全システムに発展させる計画だ。