5代目となる、ドイツBMW社の「3シリーズ」が、いよいよ日本にも導入された。BMW社の中核をなす4ドアセダンであり、その売れ行きが社運をも左右する重要な1台である。結論から言えば、今、手に入るクルマの中では非常に満足度の高い内容であり、また、価格も大いに割安感のある設定になっている。


 技術的に注目されるのは新開発の直列6気筒エンジンだ。このエンジンは、シリンダブロックがアルミニウムとマグネシウムの合金で作られており、アルミのみの場合に比べ、30%もの軽量化を実現しているという。この技術は、同社の2年前のイノベーション・シンポジウムで公開されていたものだ。

 BMWといえば、直列6気筒、あるいはV型12気筒エンジンに強いこだわりを持つ自動車メーカーであり、次世代車のパワーユニットにも水素エンジンを主張するほどである。直列6気筒やV型12気筒は完全バランスを実現することができ、振動を抑えた滑らかな回転が特徴である。

 一方で、エンジン全長が長くなることから、昨今では多くの自動車メーカーが同じ6気筒でもV型へ移行し始めている。しかしBMWは本質的に性能の優れる直列6気筒にこだわっており、その分、軽量化に務めてきた成果が、この新エンジンには盛り込まれている。試乗会場には、10cm四方ほどの立方体の金属の塊が置かれていた。一つは鋳鉄、二つ目はアルミ、三つ目はアルミとマグネシウムの合金製である。鋳鉄の塊は、上腕から肩に力が入るくらい持ち上げるのに重い。アルミはそれに比べるとずいぶん軽量だが、それでも持ち上げるためにしっかりとした握力を意識させられる。だが、アルミとマグネシウムの合金は想像以上に軽いことに驚かされた。