「レクサス」が日本に導入された8月30日から、約1カ月遅れで「IS」が発売となった。インテリジェント・スポーツセダンというのがその名の意味であり、実際に走らせてみると、先に発売となったGSやSCに比べ、いっそうスピードにこだわった運転感覚を備えるのを体感できる。なにしろ、瞬く間に法定速度を飛び越えそうなほど、滑らかに、そして静かに、ISは加速していくのである。


図1◎「レクサスIS」

 プラットフォームのベースは、レクサス「GS」であるという。すなわち元をたどれば「クラウン」である。GSのインプレッションでも述べたように、そもそもクラウンは高速安定性に優れたセダンに仕上がっていた。それがGSでより洗練され、ISでは、セダンでありながら、まるで風を切って走るスポーツカーのような速さをドライバーに感じさせるのである。

 単に直線でのスピードが速いだけでなく、カーブを抜ける速さも尋常ではない。ISを開発したチーフエンジニアは、トヨタが作った欧州車といわれている「アベンシス」の開発を担当したエンジニアであり、欧州流の走りに造詣が深い。車両の運動性能を高めるため、重量物を極力重心に近づけたと話す。

 たとえば、ISに乗ると前後の席ともにやや窮屈な印象がある。3ナンバーセダンなのにと思うが、それは意識的に乗員間の距離を近づけたのだとチーフエンジニアは説明する。そうすることで、4人乗車のときでも、乗員の重さを重心近くに集め、コーナリングなど運動性が高めるのが狙いだ。

 電動パワーステアリングの意識的な重さを運転しながら実感させられるという一面はあるものの、ワインディングロードでのISの走りは、加速、減速、コーナリングのすべての場面において切れ目なく滑らかで、自然で、速い。走りのためのパッケージングにこだわった成果が体感できた。

 そうしたスピードをもたらす動力源たるエンジンは、V6の3.5Lと2.5Lである。なかでも3.5LのV6エンジンは、直噴でありながら低速でのトルク不足を感じさせない驚くべきパフォーマンスを示す。その秘密は、一つのシリンダに二つのインジェクタを備える点にあるとエンジン担当者は語る。一つは、直噴用でシリンダ内へ直接ガソリンを噴射する。もう一つは、通常のエンジンのように吸気ポートで噴射するインジェクタである。この二つを運転状況に合わせて使い分けることにより、シリンダ内のスワールを得にくい低速域でも十分にトルクを発生させることができる混合気の供給が行えるようにしたのだ。


図2◎排気量2.5Lの直噴V6エンジン
 
図3◎排気量3.5LのV6エンジン。回転数に応じて気筒内直噴とポート噴射の両方を用いて出力を高める。

 この全域のトルク感をひとたび味わうと、2.5Lエンジンではやはり「直噴だな」と思わせる低速域での物足りなさが出てくる。しかしそれでも、2000rpmから最大トルクの90パーセントは発生させているというのだから、これは比較した相手が悪かったと解釈すべき問題だろう。2.5Lエンジン車を先に試乗すれば、それほど意識させられずに済んだことだったかもしれない。しかも、クルマのサイズとエンジンのパフォーマンスのバランスから言えば、2.5Lエンジン車は非常に運転しやすく、快適なクルマに仕上がっている。3.5L車は、オーバーパワーといえるほど、とにかくとてつもなく速いクルマなのである。アウトバーンで、競合ドイツ車と200km/h領域で比較してみたいと思わせる速さだ。