動いて動いて、ニーズに出会う
開発の極意は何か。それはニーズをつかむことである。ニーズあるということは、買ってくれる人がいるわけで、そのニーズに対応したものをつくれば売れる。単純な話である。
とはいえ、ニーズをつかむのは難しい。もちろん、既に自社で開拓した市場があり、顧客との対話ができてれば、改良・改善のためのニーズは簡単に分かるかもしれない。
しかし、これまで自社で取り組んだことのない分野や、付き合ったことのない顧客層からのニーズを引き出すというのは、並大抵のことではない。
自動車業界にいるのに、「建設分野が面白そうだから、ゼロからニーズ調査をさせてください」と上司に言ったところで、よほどの見込みがない限り、そんな調査はやらせてもらえないだろう。
この壁を突破するのが、リアル開発会議の取り組みである。リアル開発会議では、事務局から開発テーマを提供し、これに興味をもった企業が集まり、一緒に開発をする。
このテーマに対して集まるのは、シーズ側だけではない。ニーズ側も集まってくる。つまり、テーマとした技術やコトを、自分の持っている市場で使いたいというユーザーと直接議論ができる。
また、開発テーマには、ある特定の産業だけでなく、様々な産業が興味を持つと思われるものが選ばれる。そのため、素材、機械、電気、医療、環境など様々な業種から集まってくる。つまり、普通に活動していては、出会えない自社の知識や常識を超えた人々と一緒に開発ができるのだ。こんな場は世の中広しといえどそうはないだろう。
生きた情報を集めるエンジン
リアル開発会議のテーマが魅力的なのは、もちろん事務局が日々の活動で感度高く情報を集めているからではあるが、他にはない生きた情報を集める場を持っているからでもある。それはビズラボ、そしてそのビズラボにまつわるコミュニティーだ。
ビズラボは、多様な業種の開発者たちが集まるビジネスプロデューサー養成講座だ。講師である“開発の鉄人”システム・インテグレーションの多喜義彦社長から授けられる開発テーマについて、参加者が企画を練り上げる。この交流を通して、事務局メンバーも多様な業界の様々なニーズやシーズを学んでいる。多様な業種の目で磨かれた魅力的な企画がビズラボで生まれれば、それがそのまま、リアル開発会議のテーマとなる。
ビズラボは、年に2回開催している東京から飛び出して、地方にも進出している。地方自治体と組んで行う地域ビズラボだ。昨年までは広島県府中市で行っていたが、2020年には京都府京丹後市でも実施する。まだ、公表できないが、その他地域でも検討が進んでおり、2020年中に開催できる可能性がある。
各地で開催されたビズラボの卒業生たちのコミュニティーも活発である。リアル開発会議事務局では、他の企業との交流会や、地域の見学会などを企画し、ビズラボ卒業生らに案内している。また、各地域で有志による交流会も頻繁に開催されている。この交流を通じて生まれる情報も、新しいテーマの糧となる。事務局としては今後も、積極的に交流の場を提供していく予定だ。