日経ものづくり
7号

(10月号;10月1日発行)



新日鉄名古屋製鉄所でタンク爆発
ボロボロに腐食した吊り棚が引き金に


2003年9月3日午後7時40分ごろ,新日本製鉄名古屋製鉄所(愛知県東海市)の ガスタンクが轟音をとどろかせ大爆発した。このタンクは直径35×高さ50mの円筒形で, 石炭を熱してコークスにする際に生じる可燃性のコークス・オーブン・ガスを貯蔵していた。 作業員15人が重軽傷を負った,この大惨事は,ある部品の腐食がきっかけで起きた。 その背景にあるのは,ボロボロの腐食を見逃してしまう,ずさんな管理体制だ。


 爆発したガスタンク(ガスホルダー)は,1963年に建造された(図)。容量は4万m3で,製鉄に使うコークスを石炭から造る際に発生する,水素(H2)や一酸化炭素(CO)などから成るコークス・オーブン・ガス(COG)を貯蔵していた。
 このタンクの中には,曲率45mの球冠状の鋼製「ピストン」(内ぶた)がある。COGの量に応じ,側壁に設けたガイドフレームに沿ってシールを保ちつつ上下する。このとき「ヤジロベー」のようにバランスを取ることと,COGの圧力との釣り合いを取ることを目的に,ピストンの外周には表側と裏側それぞれに重りが取り付けてあった。質量は,ピストン自体が約480t,重りが計約300t。
 今回の爆発のきっかけをつくったのは,裏側に取り付けた重り。正確に言えば,その重りを載せていた「吊り棚」だった。

重りが落下し側壁に穴
 吊り棚の,重りを載せる,いわゆる棚の部分は「吊りフレーム」と呼ぶ。一方は側壁側に取り付けられ,もう一方はL型鋼を二つ組み合わせた「吊りサポート」でピストン裏側から吊られていた。同サポートの数は全部で30本。今回の爆発は,そのうちの1本の切断から始まった。
 30本のうちの1本の吊りサポートが切れる。すると,その両隣の吊りサポートにかかる荷重が増す。それらは大きな荷重に耐え切れずに,1本目と同様に切断する。爆発事故の際,こうした吊りサポートの切断が雪崩式に発生し,合計8本が切れてしまった。
 当然のことながら,吊りサポートが切断すれば,重りを乗せている吊りフレームも崩れる。事実,吊りサポート8本に吊られていた吊りフレーム9台分が崩壊し,そこに載っていた質量50t余りの重りが落下した。
 この過程でピストンか吊りフレーム,そこに乗っていたコンクリート製の重りがタンクの側壁に衝突し,厚さ4mmの鋼板に穴が開いた。その際に発生した火花の影響で,側壁外部には炎が生じる。側壁内部のCOGの濃度は爆発限界を超えていたために引火せず,側壁に開いた穴を通して外部に漏れたCOGが空気と混ざって燃え続けたのである。 (以下は日経ものづくり2004年10月号に掲載)



新日本製鉄名古屋製鉄所のガスタンク
(a)爆発し炎上するタンク。(b)鎮火したタンク(写真左下)。天蓋が吹き飛んでいる。右上のタンク(容量10万m3)の上部も壊れた。 写真:共同通信


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