日経ものづくり
6号

(9月号;9月1日発行)



ゴンドラが急制動し,乗客が落下
管理会社のメンテナンスが不十分


ロープウエーのゴンドラから乗客の夫婦が落下――。 管轄する国土交通省も「過去に例を見ない」と語る事故が, 長野県木曽郡三岳村のスキー場にある御岳ロープウェイで発生した。 落下した2人は,ヘリコプターで病院に搬送されたが,間もなく死亡。 管理会社は原因となった部品の摩耗に気付かず,保安装置も設置ミスで機能しなかった。


 事故が起きたのは,2003年10月15日。御岳ロープウェイの下り線(山頂から山ろくへと下りる方向)を,1組の夫婦を乗せて走行していた22号ゴンドラで不具合が生じた。  下り線では,山頂の乗り場を出発してすぐに下るのではなく,しばらく水平に走行する区間がある。この水平走行の区間では,22号ゴンドラに異常はないように見えた。ところが,最初の支柱(24号支柱)を過ぎて下りこう配に差し掛かると,本来の運行速度3m/sから徐々に速度を上げて滑降し始めたのである。
 このまま滑り落ちていけば,前を行く86号ゴンドラに追突する。110mもあった間隔は,見る見る縮まっていった。しかし,実際に追突することはなかった。22号ゴンドラは,速度が約14m/sに達すると,急制動したのである。急激に速度を落とした22号ゴンドラは,ワイヤとの接点を中心に進行方向に大きく振れ,ワイヤと接触。その勢いのままゴンドラは横方向に振れ,付近の支柱(23号支柱)に設置された作業台と衝突した。この衝撃でゴンドラの窓が外れ,そのすき間から乗客の夫婦が落下。ゴンドラと作業台がぶつかった際に,ワイヤがレールから外れたため,機械がそれを検知し,運転を停止した。

放索状態で下りこう配を滑降
 ゴンドラが下りこう配で滑降・急制動したのは,ワイヤの開放/拘束を切り替える装置(握索装置)が正常に駆動していなかったからである。ゴンドラの上部には,握索装置が進行方向の前後に並んだ状態で二つ付いている。そして,握索装置にはワイヤを開放した「放索状態」,ワイヤを拘束した「握索状態」の二つがある。
 通常,下り線のゴンドラは放索状態で乗り場を出発し,すぐに握索状態になる。ワイヤを開放したまま走行すれば,ゴンドラはその自重を支えているワイヤに沿って滑り落ちるからだ。
 ところが,22号ゴンドラは握索装置が両方とも握索状態になる直前の「デッドポイント状態」で乗り場を出発し,走行し続けた。本来,握索装置がデッドポイント状態を維持することはないが,22号ゴンドラは後で述べるさまざまな要因が重なったため,デッドポイント状態で走行することになった。 (以下は日経ものづくり2004年9月号に掲載)




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