a-Siに近い精細度を実現,有機TFT駆動カラー液晶パネルを試作
有機TFTは溶液材料を使って印刷法により低コストで大量生産できる可能性があり,シート・ディスプレイなど次世代ディスプレイの駆動素子として期待されている。しかし,有機TFTには,ディスプレイの駆動に必要な性能の素子を小さいサイズで実現することが困難という問題があった。このため,高精細ディスプレイに応用することが難しく,これまで開発された有機TFT駆動カラー液晶パネルの精細度は「15ppiにとどまっていた」(産業技術総合研究所)と言う。
この問題を解決するために,産業技術総合研究所,日立製作所,光産業技術振興協会のグループは今回,塗布保護膜と有機TFTの高性能化技術を新たに開発し,これらを組み合わせた。
塗布保護膜は,有機TFT上に液晶表示素子を作成する工程で有機TFTが損傷を受けて十分な出力電流が得られなくなる,という問題を解決する。従来は真空プロセスによる無機膜が一般的に使われてきたが,今回は塗布可能な材料で実現した。保護膜は,有機材料と無機材料の複合構造を採用した。「有機材料だけでは劣化防止が不十分であり,無機材料だけでは有機TFTから保護膜がはく離してしまうため」(産業技術総合研究所)である。なお,保護膜の材料や製法の詳細は明らかにしていない。
TFTの高性能化については,有機半導体と接触するメタル電極の形状を最適化して,接触界面に起因する抵抗を約1/5に低減した。有機半導体と接触するメタル電極の端面のテーパー角を急峻にすることで,接触界面付近の有機半導体の結晶粒径が大きくなり,抵抗を低減できるという。
今回の試作では,保護膜以外は真空プロセスとフォト・リソグラフィ技術を使って有機TFTを作成しているが,今後は他の材料についてもアライメント・フリー製法などの印刷法を適用していく計画である。電極,半導体,絶縁体に続き今回塗布保護膜を開発したことで,「有機TFTの作成に必要な印刷可能な材料は出そろった」と産業技術総合研究所 光技術研究部門の鎌田俊英氏は言う。今後は,単なる材料開発だけにとどまらず「これらの材料や製法をすり合わせる開発段階に入っていく」(同氏)とする。これらの技術を使った印刷可能なシート・ディスプレイの実用化時期については「4年後くらいをターゲットにしている」(日立製作所材料研究所の近藤克己氏)と言う。












