「ウォークマンこそユビキタスの元祖」−−ソニーが30時間再生のHDD音楽プレーヤ発売
同製品は,2004年7月のウォークマン発売25周年に併せて発表したもの。安藤氏は「ウォークマンは25年間で1100モデル,3億台以上を出荷してきた。今や『Walkman』は英語辞典にも載るようになり,携帯型音楽プレーヤという新しい文化を築いてきた。ウォークマンこそがユビキタスの元祖であると自負している」とし,携帯型音楽プレーヤの本家であるソニーの思い入れの強さを,こう語ってみせた。
20GバイトのHDD内蔵で,30時間再生
同製品は,筐体の薄型・軽量化でApple社の「iPod」に差をつけることを意識して開発された。筐体にMg合金を採用するなどの工夫により,外形寸法は幅89mm×奥行き62.1mm×厚さ13.8mm,重さ約110gとした。今回採用したハード・ディスク装置(HDD)は1.8インチ型で,容量は20Gバイト。同社では,「1.8インチ型HDDを内蔵した携帯型音楽プレーヤとして世界最小・最軽量」としている。
筐体の薄型化に併せて,耐衝撃性も向上させている。同製品の基板には加速度センサを実装している。このセンサが筐体の落下を検知すると,即時にHDDの磁気ヘッドをアンロード(退避)させ,磁気ヘッドとディスクが衝突するのを事前に防止する。ノート・パソコンに使われた技術に似ているものだ(NE ONLINEの関連記事)。衝撃の加速度からHDDを保護するダンパの構造も「実際に落下テストを繰り返し,衝撃の加わる部分を確実に保護できる形状や素材を開発した」(ソニー)としている。
内蔵のLiイオン2次電池の容量は760mAh。連続再生時間は最大約30時間としている。「HDDを回転させることによる消費電力を極力抑えることを目指した。このため,最大約25分の音楽データをHDDからキャッシュ・メモリに読み出し,HDDへのアクセスを極力減らすよう設計した」(ソニー)。このほか,構成部品に低消費電力品を採用するなどの工夫により,消費電力の低減を図ったとしている。
再生できるオーディオ符号化方式は「ATRAC3」と「ATRAC3plus」の2種類。同製品とパソコンを連携動作させるためのWindows用アプリケーション・ソフトウエア「SonicStage」と,USB 2.0インタフェースを採用したクレードル(台座)を標準で添付しており,これらを使用してパソコンから音楽データを転送する。
実売想定価格は約5万3000円。まず2004年7月10日に日本国内で発売し,その後7月下旬に北米で,9月に欧州でそれぞれ発売する予定だ。それ以外の地域では,今のところ発売時期は未定としている。
「ソニーらしさの追求に時間がかかった」
ウォークマンの開発を統括する,ソニー 業務執行役員 IT&モバイルソリューションズカンパニー パーソナルオーディオカンパニー プレジデントの福島貴司氏は,これまでHDD内蔵型プレーヤの発売に消極的だった理由として,「従来のウォークマンと異なり,キー・デバイスであるHDDは自社生産しておらず,外部調達に頼らざるを得ないという事情があった」と明かす。
「もちろん,キー・デバイスを外部調達して組み立てて発売するだけなら,短期間で商品化できる。しかし個人的には,キー・デバイスを自社で持たない商品に対してあまり魅力を感じなかった。キー・デバイスを外部調達するからには,設計面でソニーらしさにこだわった製品を出すことが必要だと感じており,そのために時間をかけて開発した」(ソニーの福島氏)としている。その上で福島氏は今回の製品に対し,「筐体の薄型化やバッテリの駆動時間,デザインの美しさなどでソニーの得意とするノウハウを設計に生かした」と,製品の仕上がりに自信を示している。
今回の製品と,2004年6月に発売したHDD内蔵型プレーヤ「VAIO pocket」は別々のチームで開発に取り組んでいる。「独自開発した音楽のコーデックLSIや,その実装にかかわるノウハウなどを,2つの開発チームで共有した。その上でVAIO pocketは独自のユーザー・インタフェースや液晶画面にこだわった。一方で今回のウォークマンとしては,小型化や電池の駆動時間を重視した。見た目が大きく違うので分かりにくいかもしれないが,構成部品のレベルでは共通化を図っている」(ソニーの福島氏)。なお,2004年5月に「アイワ」ブランドで発売したHDD内蔵型プレーヤは(NE ONLINEの関連記事),「事業部を統合した時点でほとんど製品が完成していたため,現行モデルではプラットフォームの共通化は実現できていない」(ソニーの福島氏)としている。















