ソニー,燃料電池の電解質膜材料として「フラーレン」検討
ソニーは,燃料電池の電解質膜材料として球状炭素分子のフラーレンが使える,と発表した。現在,自動車や家庭用コージェネレーション向けに開発が活発化している固体高分子型燃料電池(PEFC)では,固体電解質材料にパーフロオロスルホン酸系ポリマが使われているが,これは水の存在下でしかプロトンが伝導しない。これに対してフラーレンでは,官能基(OH基などの反応性の高い部分)の密度がパーフロオロスルホン酸系ポリマの5倍あるために,水がなくてもプロトンが伝導するという。PEFCでは,加湿のための装置が必要で,水が凍結する0℃以下と蒸発する100℃以上では使いにくいが,フラーレンを使えば広い温度範囲で使える可能性がある。フラーレン粉末を多孔質の支持体に封入して白金触媒で挟んだセルを試作して発電実験を行い,1.2Vの発電に成功したとしているが技術の詳細は明らかにしていない。まだ,基礎検討レベルで実用化時期などは未定だが,フラーレンは材料コスト面でも安くできる見通しで次世代燃料電池の有力候補になる可能性はある。
新しい電解質膜の採用は燃料電池研究者の悲願である。現状のパーフロオロスルホン酸系ポリマは,高価で,加湿する必要があることからシステムが複雑になり,仕様温度範囲が狭いことから使いにくい。特に,氷点下の環境では凍結を防止する対策が必要になるし,触媒活性を高めるために100℃以上の高温ににすることも難しい。各社で新規材料の開発が水面下で活発化しているが,パーフロオロスルホン酸系ポリマを超える材料の発見は極めて困難だと言われていた。
ソニーが発表したフラーレンがパーフロオロスルホン酸系ポリマを凌ぐ材料なのかどうか,詳細な技術検討を待たなくてはならないが,ユニークなのはそのプロトン伝導機構である。
パーフロオロスルホン酸系ポリマでは,水の存在下で,末端官能基であるスルホン酸がイオン化し,それらが集まったクラスタ状の分子集団をつくる。このクラスタは親水性であり,電極(水素極)で発生したプロトンの通り道になる。プロトンは水の存在下で水和物になって,このクラスタをトンネルのように通過していく。これに対して,フラーレンは官能基同士が近接して存在しており,クラスタや水和物の存在なしに,プロトンが各官能基を玉突きのように渡って伝導すると見られている。こうした伝導メカニズムはホッピング伝導といわれている。
いずれにせよ,フラーレンの製法,燃料電池セルの構造,発電特性など明らかにされていない部分が多い。今後の技術発表に注目したい。(藤堂安人)












