技術馬鹿なんぞ無用の長物である。どんなに素晴らしい技術があっても,それだけではイノベーション(新事業・新製品)を生み出せない。自分の専門分野にひたすらこだわり「技術には自信がある。でも商売は下手で」と語る技術者。異なる分野の専門家や事業責任者,あるいは顧客と会話ができない技術者。どちらに対しても「さよなら」と言うしかない。
技術馬鹿こそが待望されている人材である。専門分野の研究や開発に没頭する技術者なくしてイノベーションなどあり得ない。二流の技術者がビジネスに首を突っ込んでも三流の技術者に堕するだけ。ただし天晴れな技術馬鹿,愛すべき専門馬鹿が減っていないか。その不在を惜しみ,あえて「さよなら技術馬鹿」と言おう。
どちらがお前の本心なのかと問われれば「両方」と答えよう。技術馬鹿であっては困るが,技術馬鹿の不在も困る。矛楯していないか。その通り,世の中は矛楯だらけである。物事を一か零で割り切る一元論を拒否し,マスメディアの通説を排し,ビジネスとテクノロジーの狭間にある諸問題を読者の皆様とともに考えていきたい。
谷島宣之の「さよなら技術馬鹿」
目次
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イノベーションの鍵は「自己を超えるもの」への奉仕~硫黄島決戦と栗林中将から学ぶ・最終回
同一テーマでの連載第6回。今回ようやく、栗林中将の二面性について考えてみたい。連載当初に書いた「二面性を持てた理由●栗林中将が理詰めで考え抜くとともに、何が何でも日本を守るという気概を持っていたこと」という一文は、二面性そのものを書いているだけで、理由の説明になっていない。考えるべきは、「理詰め」…
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非合理な価値観に基づく合理精神の凄み~硫黄島決戦と栗林中将から学ぶ・番外編
本来であれば、「史上最悪のプロジェクトに挑む~硫黄島決戦と栗林中将から学ぶ」の「その5」をお届けするはずだが、今回は「番外編」を公開する。「その4」を掲載したのはなんと4月13日であり、それから5カ月以上が経ってしまった。この間、書けなくなった理由は色々あるが言い訳になるので割愛する。硫黄島に関す…
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新事業創出/新製品開発と戦争の共通点~硫黄島決戦と栗林中将から学ぶ・その4
「新製品の開発や新事業の創出を成功させるカギはどの辺りにありますか」「結局、コンジョーではないでしょうか」「コンジョーと言いますと」「根性です。いい言葉を思いつかないのですが、要するに、何が何でも最後までやり抜くという気概があるかどうかですね」
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過去の教義を捨て、新戦術を編み出す~~硫黄島決戦と栗林中将から学ぶ・その3
太平洋戦争の最激戦区となった硫黄島の決戦とその指揮官であった栗林忠道中将から、困難なプロジェクトへの取り組み方を学び、日本の近代化を考える糸口を見出す。これが本連載の意図である。
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「唯一可能な方法」を合理精神で追及~硫黄島決戦と栗林中将から学ぶ・その2
史上最悪のプロジェクトに挑む
時間が経つのは早いもので、昨年12月6日付の本欄に『史上最悪のプロジェクトに挑む~硫黄島決戦と栗林中将から学ぶ・その1』と題したコラムを掲載してから2カ月近くが経過した。この間、「その2」を書こうとしたものの、なかなか筆が進まず悶々としているうちに、2007年を迎えてしまった。1月末にこう書くのは…
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史上最悪のプロジェクトに挑む~硫黄島決戦と栗林中将から学ぶ・その1
本稿を8月半ばに公開しようと考えていた。だがなかなか書き出せない。前回記事の冒頭で次のように書いたにも関わらず、ついに12月に入ってしまった。
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95年前に漱石が憂いた「技術がもたらす神経衰弱」
読者の皆様、本コラムの執筆を長らく休んでしまい申し訳ございません。さぼっていたわけではなく、あるテーマについて本を数冊読み、長い文章を書こうとしたところ行き詰まったというのが実態です。内容を考えますと、そのコラムは8月半ばに公開すべきものでありましたが果たせませんでした。今回は、準備していた長編と…
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技術伝承は2007年問題対策になるのか?
今回は文学ネタではなく、西暦2007年問題について書く。西暦2007年問題は不思議な言葉である。何かが起こるような気がするし、胡散臭い感じもする。きちんとした論文も関連書籍もないが、言葉だけはしばしば登場する。
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究極の正義漢が書いた究極の提案書
Tech-On!読者の皆様はインターネットのWebページを読みながら食事をすることがおありだろうか。冒頭でお断りをしておく。食事中に本サイトをご覧になっている方がいたら、ここから先の文章を読むのを中断し、食事を済ませていただきたい。また、これから食事をとりに行こうとしている方も、読み進むのを控えた…
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設計書2000枚を無償で作った宮沢賢治
2週間に1回、新稿を本欄で公開するはずが、今回はほぼ2週間遅れてしまった。遅延についてまず、お詫び申し上げる。状況を説明すると、鬼編集者の赤坂氏から数回にわたって催促されたにもかかわらず、なかなか着手できなかった。業を煮やした赤坂氏から「『ガリヴァ旅行記』に入れ込みすぎましたか」と指摘されたが、そ…
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280年前に書かれた技術者礼賛~『ガリヴァ旅行記』を読む
『ガリヴァ旅行記』を知らない人はいないだろう。船乗りのガリヴァが小人の国や巨人の国を訪問する話を、子供の頃、絵本で読んだ人は多いはずだ。ただ、もともと大人向きに書かれた全四編を通読した人はあまり多くないかもしれない。ましてや、人間への罵倒で埋め尽くされた同書の中に、技術者への礼賛が含まれていたこと…
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「人と違うことをする」のは万人の義務~ダイソン本人に聞く「how to do a Dyson」その3
英国の掃除機メーカー、ダイソン社の創業者兼会長、ジェームズ・ダイソン氏が語る「how to do a Dyson」の第3回目をお届けする。我ながらきりがないので、「ダイソンする」については今回で締めくくりとしたい。
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エンジニアはセールスをしよう ~ ダイソン本人に聞く「how to do a Dyson」その2
前回に続き、ジェームズ・ダイソン氏当人に聞いた「how to do a Dyson」についてご紹介する。ダイソン氏は、紙パックがいらない掃除機の発明者であり、英ダイソン社の創業者兼会長である。
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ダイソン本人に聞く「how to do a Dyson」
「またダイソンですか。よっぽど気にいったのですね」と本欄担当の赤坂氏から言われてしまった。サイクロン式掃除機の発明者にして、掃除機メーカー英ダイソンの創業者であるジェームズ・ダイソン氏のことを書いた本原稿を、赤坂氏にまたしても提出したためである。気にいるとかいらないという話ではないが、ここ数年取材…
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邦銀元頭取と掃除機発明者の意見一致
先だって、ある銀行の元頭取に会いに行った。目的は取材ではなく、筆者の近況報告であった。長年担当していたコンピュータ雑誌を離れ、技術経営戦略誌「日経ビズテック」という妙なメディアを作り始めた頃から、時折おじゃまして状況を説明していた。昨年末までに日経ビズテックを10冊作りました、2006年は紙媒体で…
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「エンジニアは最高の仕事だ!」---ダイソン氏からのメッセージ
昨年2005年のコラムの中で一番反響があったのは、掃除機メーカーの創業者兼会長、ジェームズ・ダイソン氏に関する一文でした。そこで、2005年11月末、ジェームズ・ダイソン氏にインタビューした際にTech-On!読者に向けたメッセージを色紙に書いてもらいました。今回、年明け企画として、この色紙を公開…
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理系と文系を分ける愚
「理系か文系かで人を区別するのは、日本の愚行の一つです。理系の学校に行こうと、文系の学校に行こうと、どちらにしても数年間のことに過ぎない。それで一生の進路を決めてしまうのはどう考えてもおかしいでしょう」。今年、尾関雅則氏にお目にかかったとき、こんな話を聞いた。
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偶然の一致か、部下への批判か、世阿弥イラストの謎
「イラスト、描いておきました」。本欄のイラストレーターである仲森からこう言われた。本来は、筆者が原稿を書き、その原稿を読んで仲森がイラストを描く。だが、筆者の原稿がなかなか出来上がらないので、仲森は待ちきれず、絵を先に描いてしまった。したがって、今回は絵に合わせて文を書く。
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垂直磁気記録はトルストイの「戦争と平和」から生まれた
垂直磁気記録方式をご存知だろうか。これは、Tech-On!読者に対して失礼な質問に違いない。エレクトロニクス産業において、磁気記録装置の記憶密度を高めることは重要テーマの一つであり、読者の関心は高いはずだ。実際、Tech-On!の過去記事を検索してみると、垂直磁気記録方式の実用化については色々なニ…
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Tech-On!読者の皆様、クイズです
今回は、コラムを書くのではなく、Tech-On!読者の皆様にクイズをお出ししたいと思います。イラストを描く日経ビズテック編集長の仲森が困るかもしれませんが、彼も管理職ですから、何とかしてくれるでしょう。読者の皆様は、お忙しい方ばかりでしょうから、本コラムを印刷したうえで持ち運んでいただき、移動時間…