趣旨

技術馬鹿なんぞ無用の長物である。どんなに素晴らしい技術があっても,それだけではイノベーション(新事業・新製品)を生み出せない。自分の専門分野にひたすらこだわり「技術には自信がある。でも商売は下手で」と語る技術者。異なる分野の専門家や事業責任者,あるいは顧客と会話ができない技術者。どちらに対しても「さよなら」と言うしかない。

技術馬鹿こそが待望されている人材である。専門分野の研究や開発に没頭する技術者なくしてイノベーションなどあり得ない。二流の技術者がビジネスに首を突っ込んでも三流の技術者に堕するだけ。ただし天晴れな技術馬鹿,愛すべき専門馬鹿が減っていないか。その不在を惜しみ,あえて「さよなら技術馬鹿」と言おう。

どちらがお前の本心なのかと問われれば「両方」と答えよう。技術馬鹿であっては困るが,技術馬鹿の不在も困る。矛楯していないか。その通り,世の中は矛楯だらけである。物事を一か零で割り切る一元論を拒否し,マスメディアの通説を排し,ビジネスとテクノロジーの狭間にある諸問題を読者の皆様とともに考えていきたい。