材料で勝つ
目次
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「江戸時代」に学ぶということ
先週の土曜日(4月19日)の朝,遅く起きてなにげなくテレビをつけると,懐かしい人が画面に映っていて,おもわず見入ってしまった。
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「運」を運ぶ何か
これだけ科学や医学が発達しても治療法が見つかっていない病気はたくさんあり,多くの患者が苦しんでいる。また,人間は死を迎えるとき,すべての臓器や器官が機能不全に陥って死ぬわけではない。何か一つの臓器が悪くなって致命傷となる。だったら,悪くなった臓器を別の正常な臓器と取り替えればいい,という治療法が出…
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「違い」が分かるのは誰か
「中国は炭素繊維を造りたくて造りたくてしょうがないんですね。炭素繊維は航空・宇宙分野や軍事面でも重要な素材ですから。もう20年~30年は開発を続けているんですが,小規模なパイロットプラントではできても,何十トンという量産規模ではいまだにできていないんです」。
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「自由度」の高い生き方とは
前回書いたように,『日経ものづくり』の3月号の特集「できる中小企業 苦悩力が生むR&D」の取材チームに参加した筆者は,研究開発に熱心な中小企業の社長さんや識者の方々をインタビューさせていただいた。その識者の一人としてお話を伺ったのが,コンサルティング会社であるシステム・インテグレーション社長の多喜義…
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「中小企業」とは何か
日経ものづくりの3月号の特集「できる中小企業 苦悩力が生むR&D」の取材チームに参加し,研究開発に熱心な中小企業の社長さんや識者の方々を取材した。この特集では,中小企業は厳しい環境の中で苦悩しながらも,長期間にわたって研究開発を続けることができるなど,大企業よりもむしろ研究開発に向いているのではない…
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「血の海」を泳ぐ日本
東京大学ものづくり経営研究センターは,経営学の先生方が製造業に関する研究成果を落語風に気軽に語る「ものづくり寄席」を週一回,東京丸の内で開催している。この1月31日,久しぶりに覗いてみた。演者は,ものづくり経営研究センター特任研究員で経営コンサルタントの水島温夫氏。
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28万円カー「nano」登場の背景を考える
この1月上旬,インド・ニューデリー郊外にある日系自動車メーカーの工場を見学した後でクルマで市内のホテルに戻る途中のことである。中心部に近づくにつれてクルマが増えてきて,ついにひどい渋滞に巻き込まれた。交差点では,車線などお構いなしにギリギリ通れる隙間があれば突っ込んでくるので,クルマで埋め尽くされた…
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偉大な発見を実現する「条件」とは
京都大学の山中伸弥教授の研究チームと米ウィスコンシン大学の研究チームがそれぞれ,ほぼ同時に人の体細胞から「万能細胞」(iPS細胞)を作製することに成功した,と発表した。一度,皮膚などの組織に分化した細胞に遺伝子を組み込むことによって,さまざまな種類の細胞になれるような状態に「リセット」できるという魔…
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他者に学ぶ---『ものづくり寄席』を聴いて
1カ月ほど前のことになるが,10月18日,東京大学ものづくり経営研究センターが主催している「ものづくり寄席」を覗いてきた。ふだんは象牙の塔で研究にいそしむ先生方が祭りのはっぴを着て,経営学を落語風に語る,という趣向である。2年前に開講していったん中断していたが,好評のため再開したということであった。
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「FPDは2010年以降も成長する」---FPD Internationalの基調講演より
先週の10月24日,FPD(フラットパネル・ディスプレイ)関連の展示会「FPD International」が開催された。このところ,FPD産業は「収益率が低下してきた」「成長性に陰りが見える」「2010年以降のテレビの次の大型アプリケーションが見つかっていない」といった将来性を疑問視する声が聞かれ…
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技術の「普遍性」について考える
当コラムではこのところ,水平分業化が進んだ状況の中で日本企業がどのようにして競争力を上げるかについて考えている。できれば総集編として,統合型企業にとってもっとも重要な完成品ビジネスで勝つ方策について書いてみたいのだが,筆者の頭もだいぶ煮詰まってきたので,ここでちょっと方向を変えて,技術の「普遍性」と…
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水平分業の世界で日本企業が競争力を上げるには---プロセス型製品編
前回のコラムでは,デジタル家電の産業構造がモジュラー化/水平分業化/コモディティー化していく中で,どのようにしたら競争力を上げられるかについて考えてみた。続いて本稿では,サプライチェーンのレイヤーを上流にさかのぼって,プロセス型の産業構造を持つ基幹部品やさらに上流の基幹部材そのものが水平分業化する状…
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水平分業の世界で日本企業が競争力を上げるには---部品編
日本の製造業は「垂直統合型の組織を持ち,部品から完成品にいたる一連の研究・開発や設計・製造を各要素を擦り合わせながらクローズドに進める組織能力を培ってきた」といわれる。擦り合わせが重要な意味を持つ製品(インテグラル型)では,この垂直統合型の組織能力によって高い競争力を発揮してきた。しかし近年,最初は…
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人はみな「Intel」を目指す?---「オープンな世界」と「クローズドな世界」を結ぶ「プラットフォーム」とは
前回のコラムの最後で,日本が得意とする垂直統合モデルや擦り合わせ力を生かして,水平分業化/モジュラー化した世界で競争力を上げる一つの方向として,「日本の得意技によって生み出した技術ノウハウをクローズドなところに押し込めてブラックボックス化すると同時に,オープンな『窓』のような部分を開けて,世界的なレ…
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薄型テレビのモジュラー化/水平分業化はどこまで進む---中国家電量販店の店頭で思ったこと
先々週,中国・北京に出張した際,郊外にある家電量販店をいくつかのぞいてみた。入り口は緑色やオレンジ色,ピンク色などであふれる派手なつくりだが,中に入ると薄暗く,冷房の効きが悪いのか,とても蒸し暑い。汗だくになりながら,まるで工場の倉庫のようだと思っていると,同行した当社の中国人スタッフが言うに,まさ…
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「拡大する共同体」と「拡大しない共同体」
先週のお盆休み,うだるような暑さの中,帰省先で某書店を覗くと,面白いタイトルの本が目に入った。『中国の不思議な資本主義』(東一眞著,中公新書クラレ)である。特に筆者が興味を持ったのは,「共同体」に対する中国人と日本人の考え方の違いについての考察である。
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「垂直統合化」と「水平分業化」の「両立」を目指す?---シャープ記者懇談会に出席して
先週の8月2日,シャープの記者懇談会が都内のホテルで開かれた。同じ週の7月31日に「『21世紀型コンビナート』と銘打った液晶第10世代パネルと薄膜太陽電池の新工場を大阪府堺市に建設する」と発表したばかりだったので,会場は報道陣でごった返していた。かく言う筆者も新工場のコンセプトに興味があったのと,こ…
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「チープレーバー・ギフト」と「オープン・アーキテクチャーの進化形?」---『ウィキノミクス』を読んで
『ウィキノミクス---マスコラボレーションによる開発・生産の世紀へ』という本をようやく読み終えた。2007年6月初めごろに,弊社の出版を手掛けいている担当者から出版前の見本版なるものを手渡されたのだが,なんせ500ページ近い分厚い本である。通勤の電車でボツボツ読んでいたら1カ月が経ち,そのうち発行さ…
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「私を消す」とはどういうことか
この7月10日,NBonlineに掲載された「『見る』学習と『なぞる』学習~鬼師・美濃邉恵一~」というコラムを興味深く読んだ。このコラムは,脳科学者の茂木健一郎による「超一流の仕事脳」という連載シリーズで,NHKの番組「プロフェッショナル 仕事の流儀」と連動した企画である。このコラム・番組に登場した…
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「中国は敵か味方か」---技術在線!S編集長との対話
先週のある日,たまたま日経Automotive Technology誌のT編集長の席の横を通り過ぎると,その乱雑な机の上に無造作に置いてある刺激的なタイトルの本を見つけた。『中国は敵か味方か』(角川書店,2007年5月)である。T編集長に聞くと,著者の莫邦富氏は昔からの取材先で,自動車技術セミナー「…