個人・患者本位で最適な健康管理・診療・ケアを提供するための基盤として、国が整備する全国規模のネットワーク。病院・診療所、薬局、介護事業所などが持つ情報を巨大なネットワークでつなぎ、生涯に渡る医療などの情報を個人や関係機関が経年的に把握することを可能にする。EHR(Electronic Health Record)とPHR(Personal Health Record)の実現を目指すものである。

 2017年6月に発表された「未来投資戦略2017」の健康・医療・介護分野における一施策として掲げられた「データ利活用基盤の構築」の一環として整備が進められる。2020年度の本格稼働を目指している。

 患者基本情報・診療情報や健診情報などを本人の同意の下で共有できる「保健医療記録共有サービス」と、基礎的な患者情報を救急時に活用できる「救急時医療情報共有サービス」 などで構成される。これらのサービスを提供する上でカギとなるのが、地域医療情報連携ネットワークの拡充・有効活用である。

 総務省と厚生労働省は、地域の医療情報連携ネットワークの高度化による全国普及を促進するため、クラウド型EHR高度化事業に取り組んでいる。これは全国各地で展開されている地域医療情報連携ネットワークを相互に接続する相互接続基盤を構築するとともに、各地の医療連携システムをクラウド化に移行することにより継続的な運用を支援する事業である。PHR基盤の構築も進められており、電子化した母子健康手帳やお薬手帳、各種の疾病管理手帳、健診情報などのデータを時系列で管理する連携基盤の構築にも取り組んでいる。

 全国保健医療情報ネットワークは、病院・診療所、薬局、介護事業所などが安全に情報へアクセスできる暗号化通信方式や認証基盤などを備えたアクセスインフラとしての機能も持つ。被保険者のオンライン資格確認やレセプトオンライン請求などの医療等分野のさまざまなサービスも同ネットワークを介して利用することが計画されている。従来、それぞれのサービスによってネットワークが敷設されていたが、同ネットワークによって統合・一元化されることになる。