医療用ソフトウエアの承認プロセスを刷新するための、FDA(米国食品医薬品局)によるパイロットプログラム。正式名称は「Digital Health Software Precertification Pilot Program」。2017年7月にFDAが立ち上げたもので、プログラムへの参加を認定した企業9社を同年9月に発表した(関連記事1)。

 FDAは、デジタル技術を用いたイノベーションを適切に評価する体制を整えるために、「Digital Health Innovation Action Plan」と呼ぶガイドラインを2017年7月に策定。Pre-Certパイロットプログラムはその柱となる取り組みである。

 同プログラムでは、スマートフォンアプリなどのソフトウエアの機能が随時更新される点に着目。医療用ソフトウエアの有効性や安全性を個別製品ごとに審査するのは非効率であることから、それを手掛ける企業の品質管理などの体制に目を向けた承認プロセスを確立する。これを通じて審査を効率化し、イノベーションを適切に臨床現場に届けられるようにする。

 具体的には次のような形だ。医療用ソフトウエアを審査するに当たって、ソフトウエアの設計や検証、メンテナンスなどの手法を企業ごとに事前に審査。FDAが求める基準を満たす企業を認定する。その上で、認定した企業が手掛ける医療用ソフトウエアについては、FDAに提出すべき情報を簡素化できるようにするなどして、審査を効率化する。今回のプログラムでは、こうした審査にどのような指標を用いるのが適切かなどを、プログラム参加企業からの情報を基に明らかにしていく。

 参加企業に認定されたのは、米Apple社、米Fitbit社、米Johnson & Johnson社、米Pear Therapeutics社、米Phosphorus社、スイスRoche社、韓国Samsung Electronics社、米Tidepool社、米Verily社の9社。プログラムに関心を寄せた100社以上の中から、企業の規模や品質に関する実績、注力領域などを基準に選んだという。

 調査・コンサルティング会社の米Frost & Sullivan社は、2018年にはこうした取り組みが後押しする形で、大手テクノロジー企業の中からFDAの規制対象となる臨床領域に参入する企業が出てくると予測する(関連記事2)。Pre-Certパイロットプログラムへの参加が認められたApple社やFitbit社、Samsung Electronics社などをその有力候補に挙げている。

 日本では2014年末に医薬品医療機器等法(薬機法)が施行され、スマートフォンアプリなどの単体ソフトウエアが医療機器として認められるようになった。既に医療機器として承認され、保険収載もされたアプリが誕生しており、治療を目的とするアプリの治験を始めるといった動きもある(関連記事3同4)。厚生労働省やPMDA(医薬品医療機器総合機構)が今後、デジタルヘルス分野の承認プロセスについてどのような施策を打ち出すかに注目が集まりそうだ。