特定の個人を識別することができないように個人情報を加工した情報で、さらに個人情報の復元ができないようにした情報(個人情報保護法第2条第9項)。個人情報の取り扱いよりも緩やかな規律の下、自由な流通・利活用を促進するために、2017年5月30日に施行された改正個人情報保護法において新設された。個人情報の利用目的として定めた目的以外での利用や、本人の同意なく第三者に提供することが可能になるメリットがある。

 2017年5月12日に公布され、1年後の施行が予定されている「次世代医療基盤法」においては、匿名加工した情報をどのように医療分野の研究開発に利活用していくのか基本方針を策定している(関連記事)。医療情報を匿名加工し、管理・提供していく責務を負う事業者を「認定匿名加工医療情報作成事業者」として認定することになっている。

 匿名加工情報を作成するためには、個人情報保護委員会が定めた匿名加工情報の作成に関する基準に従って、適切な加工を行う必要がある。匿名加工情報の加工基準としては、主に次のような5点を挙げている。すなわち、(1)特定の個人を識別することができる記述等の削除、(2)個人識別符号の削除、(3)情報を相互に連結する符号の削除、(4)特異な記述等の削除、(5)個人情報データベース等の性質を踏まえたその他の措置、である。

 (1)は、氏名や性別、住所、生年月日など特定の個人を識別できる記述などを全部または一部を削除、あるいは他の記述などに置き換えることによって、特定の個人を識別できないようにする加工である。例えば氏名、住所、生年月日は削除するか、住所は○○県△△市、生年月日は生年月に置き換える。

 (2)の個人識別符号とは、個人の身体の一部の特徴をコンピューターなどで利用する際に変換した符号(DNA、顔、虹彩、声紋、歩行の態様、手指の静脈、指紋・掌紋などの生体情報)のうち、特定の個人を識別するに足りるものとして規則で定める基準に適合するものである。また、旅券番号、基礎年金番号、免許証番号、住民票コード、マイナンバー、各種保険証の番号などの公的機関が割り振る番号なども該当する。

 (3)の情報を相互に連結する符号とは、例えばサービス会員の情報について、氏名などの基本的な情報と購買履歴を分散管理し、それらを連結するために付された管理用IDなど。これらも削除するか、連結にかかわらない他の符号に置き換えなければならない。

 (4)の特異な記述とは、希少な事実に関する記述などや他の個人と著しい差異が認められる記述で、例えば症例数の極めて少ない病歴、あるいは年齢が「116歳」といった記述など。極めて少ない病歴などは削除、116歳という情報は「90歳以上」といった記述に置き換えなければならない。