ICT(情報通信技術)をはじめとするテクノロジーを活用することで、保険サービスの効率や収益性を高めたり、革新的な保険サービスを生み出したりすること。Insurance(保険)とTechnology(テクノロジー)を掛け合わせた造語であり、InsTech(インステック)とも呼ばれる。テクノロジーを駆使して革新的な金融商品やサービスを生みだすFinTech(フィンテック)の保険業界版と言える。

 InsurTechに関わるさまざまな取り組みの中で、多くの保険会社がその柱の一つに位置付け始めたのが「保険×デジタルヘルス」の領域。スマートフォンやウエアラブル端末、ビッグデータや人工知能(AI)などを活用し、加入者の健康を支えるサービスを提供するような取り組みである。ここ1~2年で取り組みが本格化しており、中小から大手までがこぞって力を入れ始めた(関連記事1同2)。

 万一の備えとしての保険商品を提供するだけの存在ではなく、加入者の日常に寄り添い、生涯にわたって健康を支える存在へ。デジタルヘルスという手段を使ってそうしたシフトチェンジを図り、加入者の生活に密着したさまざまな切り口からサービスを提供していく狙いが、各社にはある。健康増進を軸とした予防医療の重要性が高まっているという社会的ニーズと、さまざまなテクノロジーを低コストで利用できるようになってきたというシーズ側の変化を背景に生まれた動きだ。

 具体的な取り組みには、いくつかのバリエーションがある。(1)ICTを用いて加入者の健康状態や日々の活動を計測し、それを保険料に連動させる、(2)スマートフォンアプリやそれを用いた健康増進プログラムを提供し、加入者の日々の健康を支援する、(3)事業パートナーとなり得るヘルスケアベンチャーを支援したり、サービス開発で連携したりする、といった形である。こうした事業を展開していく上で、保険会社はヘルスケアベンチャーのほか、IT企業や健康機器メーカー、薬局、広告代理店など、さまざまな異業種との連携を模索し始めている(関連記事3)。

 デジタルヘルス業界側から見た場合、保険会社の参入に対しては、デジタルヘルスという分野に経済性をもたらすことへの期待がある(関連記事4)。保険会社にとっては、加入者を健康にすることは保険金の支払いを減らすことに直結し、強いモチベーションが働く。この分野に投資をしてもそれを回収できる見込みがあるわけだ。これまでビジネスモデルの構築に悩むことが少なくなかったデジタルヘルス分野の状況を大きく変えていく可能性に、注目が集まっている。