国民が、世界最高水準の保健医療サービスを効率的に受けられる環境の構築に向け、ICTを活用した「個々人に最適な健康管理・診療・ケア」の提供や、健康・医療・介護のビッグデータを連結した「保健医療データプラットフォーム」を構築していく厚生労働省の戦略。2017年6月9日に閣議決定された「未来投資戦略2017」に盛り込まれた厚生労働省所管の戦略の根幹を成すものでもある。同省は、このデータヘルス改革に関する法案を2017年度中に提出することを計画しており、2020年度をめどに次世代の健康・医療・介護ICT基盤を本格稼働させることを目標としている。

データヘルス改革の全体像(出典:厚生労働省の資料から抜粋)
データヘルス改革の全体像(出典:厚生労働省の資料から抜粋)
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 具体的な推進に向けて、データヘルス改革推進本部が2017年1月に設置された。方向性としては、次の3つの戦略を一体的に展開していくことを掲げている。すなわち、(1)がんゲノム医療の実現、保健医療分野のAI(人工知能)の開発加速化、遠隔医療、介護ロボットなどの最先端技術の活用、(2)ビッグデータを活用した保険者機能の強化、科学的介護の実現、(3)保健医療分野のデータ利活用基盤の構築、である。

 構築していく「保健医療データプラットフォーム」は、「つくる」「つなげる」「ひらく」をキーワードとする「3つのパラダイムシフトと3つのインフラ」がコンセプト。

 「つくる」が意図するのは、データの収集段階から、集積・分析・活用という“出口”で使えるアウトカム志向のデータを生成すること。それらのデータを、AIを用いてビッグデータ解析し、“現場の最適な診療を支援するシステム”を構築していく。

 「つなげる」は、個人の健康な状況から疾病・介護段階までの基本的な保健医療データを統合するPHR(Personal Health Record)の概念。医療・介護スタッフが統合された個人のデータを共有し、個人自らも健康管理に役立てられる“オープンな情報基盤”を整備する。

 「ひらく」は、産官学のさまざまなプレイヤーがデータにアクセスして、医療・介護データをビッグデータとして二次活用すること。そのために、“利用者別に収集・匿名加工・提供できるプラットフォーム”を構築していく。これは2017年4月に成立し、2018年に施行される「次世代医療基盤法」による医療ビッグデータ利活用プラットフォームである(関連記事)