IoTやビッグデータ、人工知能(AI)、ロボット、シェアリングエコノミーなどのイノベーションをあらゆる産業や社会生活に取り入れ、さまざまな社会課題を解決する「Society 5.0」の実現に向けた政府施策。2016年9月から2017年6月まで10回にわたり開催された「未来投資会議」での検討内容を取りまとめたもので、2017年6月9日に閣議決定された。「Society 5.0の実現に向けた改革」との副題が付けられている。

 未来投資戦略2017では、Society 5.0の実現に向けて、5つの戦略分野を指定した。その筆頭に挙げたのが「健康・医療・介護」である。

 この分野で「新たに講ずべき具体的施策」としたのが、団塊の世代がすべて75歳以上になる「2025年問題」の克服に向けて、技術革新を活用し、健康管理と病気・介護予防、自立支援に軸足を置いた新しい健康・医療・介護システムを構築すること。具体的には(1)データ利活用基盤の構築、(2)保険者や経営者によるデータを活用した個人の予防・健康づくりの強化、(3)遠隔診療・AI等のICTやゲノム情報等を活用した医療、(4)自立支援・重度化防止に向けた科学的介護の実現、(5)ロボット・センサー等の技術を活用した介護の質・生産性の向上、の5つを挙げた。

 (1)では、最適な健康管理・診療・ケアを個人・患者本位で提供するための基盤として、「全国保健医療情報ネットワーク」を整備する。それを基に、自らの生涯にわたる医療等の情報を本人が把握できるPHR(Personal Health Record)を構築することを目指す。2020年度からの本格稼働を計画する。

 (2)では、予防・健康づくりなどに向けた加入者の行動変容を促す保険者の取り組みを推進するために、保険者に対するインセンティブを強化する。

 (3)では、遠隔診療やAIの活用促進に言及した。遠隔診療については、オンライン診察を組み合わせた糖尿病などの生活習慣病患者への効果的な指導・管理や、血圧・血糖等の遠隔モニタリングを活用した早期の重症化予防など、対面診療と遠隔診療を適切に組み合わせることにより効果的・効率的な医療の提供に資するものについては、次期診療報酬改定で評価を行うとした。AIに関しては、画像診断支援、医薬品開発、手術支援、ゲノム医療、診断・治療支援、介護・認知症を重点6領域と定めて、開発や実用化を促進する。

 (4)では、自立支援などの効果が科学的に裏付けられた介護を実現するために、必要なデータを収集・分析するためのデータベースを構築する。2017年度中にケアの分類法などのデータ収集様式を作成し、2018年度中にデータベースの構築を開始。2020年度の本格運用開始を目指す。

 (5)では、介護現場でのロボットやセンサーの活用について、効果実証を進める。その結果を踏まえ、利用者の生活の質の維持や向上と介護者の負担軽減に資するものについては、次期介護報酬改定の際に対応を行うとしている。