医療機器分野のイノベーションを牽引する人材を育成することを目的に、米スタンフォード大学が2001年に立ち上げた教育プログラムのこと。臨床現場のニーズや事業化を意識した医療機器の開発手法やそのための考え方を、実践的に学ぶ場を提供する(関連記事)。

バイオデザインの本家、スタンフォード大学で開催されたヘルスケアハッカソン「health++ 2017」の日本での報告会の様子。同イベントでもバイオデザインがテーマの一つになった
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 バイオデザインでは、医療現場のニーズを出発点として、医学や工学、ビジネスなど分野横断的な視点から、革新的な医療機器を創出することを目指す。「Identify(ニーズの特定)」「Invent(医療機器の開発)」「Implement(事業化)」という3つのプロセスがその基本要素。医療者やエンジニアなど多彩な人材がチームをつくり、医療現場のニーズを探りながらその解決に向けたアイデアを出し合い、プロトタイプ開発やその検証などを行う。当初から事業化の視点を取り入れ、臨床現場で本当に必要とされる医療機器の開発手法やそのための考え方を学べる点が大きな特徴である。

 革新的な医療機器開発やそのための人材育成につながる手法として、日本での注目も高まっている。2015年10月にはスタンフォード大学と大阪大学、東京大学、東北大学がパートナーシップを締結。医療機器業界と連携しながら、日本発の医療機器イノベーションを促進する「ジャパン・バイオデザイン・プログラム」がこれら3大学に発足した。社会人や学生向けのコースがあり、例えばフェローシップと呼ばれる約1年間の社会人向けコースでは、バイオデザインのプロセスをハンズオン形式で学べる。同プログラムに対しては、文部科学省が「橋渡し研究加速ネットワークプログラム」を通じた支援を行っている。

 産業界とアカデミアの橋渡しを担う組織として、一般社団法人「ジャパンバイオデザイン協会」も2015年に発足した。日本医療機器産業連合会(医機連)をはじめとする産業界との連携のほか、ジャパン・バイオデザイン・プログラムの運営支援を担う。同協会の理事には、医機連前会長の中尾浩治氏(元・テルモ会長)や現会長の渡部眞也氏(日立製作所 執行役常務ヘルスケアビジネスユニットCEO)など、医療機器業界のキーパーソンが名を連ねている。

 同協会によれば、バイオデザインは日本のほか、インド、シンガポール、アイルランド、イギリスなど世界各国で取り入れられている。社会実装の点でも既に成果をあげている。バイオデザインは過去14年間で40社の起業や400件以上の特許出願につながり、50万人を超える患者がバイオデザインを通じて創出された医療機器の恩恵を受けているという。