2000年半ばに米国で登場した、遺伝子の塩基配列を高速に読み出せる装置を「次世代シーケンサー(Next Generation Sequencer:NGS)」と呼ぶ。塩基配列を並列に読み出せるDNA断片数が、従来のDNAシーケンサーに比べて桁違いに多い。このため、ゲノム(遺伝情報)を圧倒的に低いコストと短い時間で解析することを可能にする。DNAシーケンサー最大手の米Illumina社が開発を牽引してきた。

 次世代シーケンサーの登場以来、ゲノム解析のスループットは半導体における「Mooreの法則」をしのぐペースで高まってきた。ヒトゲノム解読に2003年に成功した国際プロジェクトでは、塩基配列の解読に13年という時間と、30億米ドルもの費用を費やした。これに対し現在では、1000米ドルほどの費用で数日間で解析可能となってきた。

国立がん研究センターが遺伝子検査室「SCI-Lab」に導入した米Illumina社の次世代シーケンサー「MiSeq」
国立がん研究センターが遺伝子検査室「SCI-Lab」に導入した米Illumina社の次世代シーケンサー「MiSeq」
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 次世代シーケンサーが特に大きなインパクトを与えているのが、がん医療の分野だ。次世代シーケンサーでがんの遺伝子情報を網羅的に解析し、カギを握る遺伝子異常をターゲットとする薬(分子標的薬)の投薬につなげる。これを研究ではなく、日常診療に導入する動きが活発化している。日本では国立がん研究センターが、網羅的遺伝子解析の日常診療への導入を目指し、次世代シーケンサーと独自の検査キットを使った臨床研究を進めている(関連記事1)。