介護保険制度において、市町村が各地域の状況に応じて取り組むことができる地域支援事業の1つ。通称、総合事業。2015年度の介護保険法改定以来、各市町村は段階的に総合事業への移行を進めており、2017年3月までの完全施行が義務付けられている。

 対象となるのは、要支援1および2認定者の訪問・通所介護で、これまで全国一律の介護予防給付で提供されていた。市町村ごとの総合事業へと移行することで、各地域の特色を生かしたサービスを創出することが狙いだ。

 総合事業への移行で、介護資格を持たなくとも市町村の定めた研修を受ければ、訪問型サービスは生活支援などの一定の介護業務を行うことができる。これは、厚生労働省が従来の規制を緩和し、地域ごとの多様なサービスを生み出すことを後押しした結果だ。

介護予防・日常生活支援総合事業の構成(厚生労働省の「介護予防・日常生活支援総合事業ガイドライン(概要)より)
介護予防・日常生活支援総合事業の構成(厚生労働省の「介護予防・日常生活支援総合事業ガイドライン(概要)より)
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 総合事業には、一般介護予防事業も含まれる。介護予防事業は、かねて一次予防事業および二次予防事業として各市町村で実施され、それぞれ健康な人を対象に発病を予防するもの(一次予防事業)と疾病の早期発見と治療をするもの(二次予防事業)、に区別されていた。しかし、一次・二次予防それぞれの対象者を割り出すために、介護予防事業全体の約3割を占める費用がかかっていたという。そこで、一般介護予防事業では、地域の実情を把握したうえで、介護予防活動の普及や啓発を行う。目指すのは、年齢や症状による線引きをなくすことで、健康な状態から疾病発症後まで切れ間のない介護予防の実現だ。

 国で一律だった介護予防給付や、健康状態によって一次予防・二次予防と線引きされていた介護予防事業は自治体ごとの総合事業へと移行する。介護保険は各自治体に軸足を置くこととなり、先に見据える地域包括ケアシステムの構築に向けた序幕といえるだろう。