半導体メモリーの市況は引き続き弱含みで推移している。2G DRAMは2015年6月末に1.79ドル(東京での大口需要家向け出荷価格の平均値、以下同)だったものが、2016年6月末で1.03ドル、約42%値下がりした(図1)。ただし昨年の9月以降はあまり値動きはなく、1ドル割れ直前で踏みとどまっている。

図1 DRAM 2Gビット DDR3型の価格推移
図1 DRAM 2Gビット DDR3型の価格推移
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 4G DRAMは2015年6月末に3.20ドルだったものが、2016年6月末で1.77ドルとなり、45%値下がりした(図2)。こちらも、このところ値動きは少なく安定していたが、4月以降は1.89ドル、5月末以降1.77ドルと2ドルの壁を破って下落しつつある。これにより4G品は、ビット単価で2G品を大きく下回った。

図2 DRAM 4Gビット DDR3型の価格推移
図2 DRAM 4Gビット DDR3型の価格推移
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 DRAM価格の下落は、世界のパソコン出荷台数の減少による。市場を引っ張ってきた新興国の成長が鈍化しているのが大きい。米Micron Technology社は6月30日に2016年3~5月期の決算を発表したが、2億1500万ドル(約217億円、1ドル=101円換算)の純損失を計上した。前年同期が4億9100万ドルの黒字だったので大幅な業績悪化である。

 その一方で、メモリー容量を増やした中国製スマートホンの出荷が増え始めており、DRAMメーカーはパソコン向け製品からスマホ向け製品への切り替えを進めている模様だ。これを受けて、パソコン向けの低容量DRAMのスポット価格が、徐々に上昇気味となっている。

図3 フラッシュメモリー NAND型32Gビットの価格推移
図3 フラッシュメモリー NAND型32Gビットの価格推移
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 NAND型フラッシュメモリーの32Gビット品の価格は、2015年9月末以降、2.05ドルから2.0ドルで安定している。その前の1年半ほどは2.5ドルが続いていた。したがって、1年前と比べると約20パーセントの価格低下となる(図3)。64Gビット品もほぼ同様の値動きだ(図4)。2016年6月末の平均価格は2.3ドルで、ビット単価で見ると32G品より大幅に割安である。

図4 フラッシュメモリー NAND型64Gビットの価格推移
図4 フラッシュメモリー NAND型64Gビットの価格推移
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 フラッシュメモリーの用途であるスマートフォンも、新興国を中心に成長が鈍化している。2015年の世界のスマホ出荷台数は14億4000万台と見られるが、2016年は15億台程度と微増である。ただし、1台あたりのメモリー搭載量は増加基調にある。秋に仕様が発表となるApple社の新型iPhoneではメモリー容量が大幅増となる可能性もあり、フラッシュメモリーの需要が強まるかもしれない。フラッシュメモリーにはスマホ以外に高性能パソコン用SSDやデータセンター用のSSDなどがあり、市場は成長中だ。逆に、メモリーカード_などの製品は利益率が悪く、メモリーメーカーは出荷を絞っている。

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