帝人フィルム事業本部シート・フィルム開発室プロジェクトリーダーの吉田哲男氏(左)と関西大学システム理工学部学部長教授の田實佳郎氏
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帝人フィルム事業本部シート・フィルム開発室プロジェクトリーダーの吉田哲男氏(左)と関西大学システム理工学部学部長教授の田實佳郎氏
「圧電ロール」
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「圧電ロール」
積層フィルム生産の課題
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積層フィルム生産の課題

 帝人と関西大学は、ポリ乳酸の積層フィルムをロール状にした圧電体「圧電ロール」を開発したと2016年12月22日に発表した。この圧電体に力を加え続ければ、最大2分ほど電圧の出力を維持できる。従来の圧電体は、電圧を出力できる時間が数百μsほどに留まっていた。

 最大の特徴は積層フィルムをロール状にしたことで、巻回数により出力の持続時間を調整できるようにしたこと。電圧は荷重の大きさに比例し、「0.001kgfから100kgfまでの間で出力を生じる」(関西大学システム理工学部学部長教授の田實佳郎氏)という。

 開発品である圧電体はポリL乳酸とポリD乳酸のフィルム、電極のアルミを積層して作製している。ポリL乳酸とポリD乳酸は、立体構造が互いに鏡像である光学異性体だ。ポリ乳酸は圧力を与えると、正と負の電荷がフィルムの表裏に分かれて発生する。そしてポリL乳酸とポリD乳酸のフィルムは、製造工程が同じでも電荷の正負が表裏逆に発生する。これを積層することで、発生する電荷を増やせる。

 ポリL乳酸もしくはポリD乳酸のみで開発品のような積層フィルムを生産するには電荷の打ち消しを防ぐため、一枚おきにフィルムを裏返して、しかも配向をそろえるためフィルムの向きを変える必要がある。そのような工程が入ると連続生産が難しくなることから、電荷が逆に発生するポリL乳酸とポリD乳酸のフィルムを組み合わせて重ねるようにした。