NECは2016年12月19日、人工知能(AI)を用いて新薬の候補物質を発見し、実用化を支援する創薬事業を開始すると発表した(プレスリリース)。事業開始に当たり、がん治療用のペプチドワクチンを開発する新会社「サイトリミック」を設立した。

 NECはヘルスケア分野で、医療業務支援や疾病予防、診断支援などのサービスを手掛けているものの、創薬事業を手掛けるのは初めて。長年研究が続けられていながらも標準治療としてのエビデンス確立に至っていない、がん治療用ペプチドワクチンという挑戦的なテーマに挑む。

12月19日に東京都内で記者会見を開催した
12月19日に東京都内で記者会見を開催した
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 ペプチドワクチンは、人の免疫機能を利用するがんの免疫療法に使うもの。9個程度のアミノ酸から成り、皮下注射すると体内でがんを攻撃する免疫(キラーリンパ球)を活性化する。

 免疫療法のうち、免疫ががんを攻撃する際のブレーキを解除するというアプローチをとる免疫チェックポイント阻害剤は、一部のがんに対して既存の抗がん剤に対する優位性が臨床試験で確認され、臨床応用が始まっている。一方、攻撃のアクセルを踏むというアプローチをとるペプチドワクチンでは、そうしたエビデンスがまだ確立されていない。新会社では、この課題の克服に挑む。

 実は、NECは以前からペプチドワクチンの可能性に着目し、大学との共同研究などに取り組んできた。AIによって候補物質の探索を効率化できるなど、NECが得意とする「ICTとの相性は良い」(同社 取締役 執行役員常務 兼 CMOの清水隆明氏)という。