ジェイアイエヌは、視線の移動やまばたきを計測できる眼鏡型端末「JINS MEME(ジンズ・ミーム)」を使って家電などの電子機器を操作するスマートフォン(スマホ)向けアプリケーションソフトウエア(アプリ)を2017年2月上旬に無料で配信する。アプリのソースコードも公開し、新機能開発の促進を図る。

ジェイアイエヌの眼鏡型端末「JINS MEME」。
ジェイアイエヌの眼鏡型端末「JINS MEME」。
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 JINS MEMEの特徴は、見た目や重さが一般的な眼鏡とほぼ同じであること。鼻あてと眉間部に眼電位を計測するための電極を備え、まばたきや8方向の眼球の移動を検知できる。さらに、眼鏡のつるの先端に搭載した加速度/角速度センサーで頭部や体の傾きを計測できる。2015年11月の発売以降、ジェイアイエヌはユーザーの目の動きから疲労度や眠気を推定したり、運動時の頭部の動きを計測してフォーム改善に役立てたりできるJINS MEME専用のスマホ向けアプリを展開してきた。

JINS MEMEで照明を操作するデモ。まばたきで色が変わる。
JINS MEMEで照明を操作するデモ。まばたきで色が変わる。
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 今回新たに公開するAndroidアプリ「JINS MEME BRIDGE(仮称)」では、JINS MEMEのセンシング情報を使い、スマホを経由して家電やパソコンなどを操作できる。例えば、まばたきで照明を点灯したり、眼球の動きでスマホ上の地図をスクロールしたりといった使い方が可能だ。

眼球の動きでスマホ画面上の地図をスクロールするデモ。
眼球の動きでスマホ画面上の地図をスクロールするデモ。
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 JINS MEMEで身の回りの機器を操作するという発想は、「ユーザーの心身の状態を計測する」というこれまでのコンセプトとは異なる。今回のような新機能を実装するプロジェクトは、JINS MEMEとALS(筋萎縮性側索硬化症)を患う武藤将胤氏(一般社団法人WITH ALS代表)の出会いをきっかけに始まった。ALSは手足や口など体の運動機能が低下する疾患。発症後も眼球の機能は正常に保たれると言われており、眼球の動きを検知できるJINS MEMEに武藤氏が着目した。プロジェクトには武藤氏とジェイアイエヌ、博報堂などが携わり、8カ月ほどかけて今回のアプリを作った。「眼の動きによるコミュニケーションや感情表現は、ALS患者の新たな希望になる。この活動を通し、患者や健常者の垣根を超えて全ての人を応援したい」(武藤氏)と意気込む。

 2016年12月15日に開催した記者発表会では、武藤氏がJINS MEMEを用いたVDJ(Video DJ、映像と音声によるDJ)パフォーマンスを披露した。今回VDJシステム専用に開発したユーザーインターフェース(UI)は、パソコンの画面上に9つの円を表示するもので、JINS MEMEをかけながら画面を眺めて操作する。視線移動を“十字キー”、まばたきを“決定ボタン”、顔の傾き動作を“リセット”に割り当て、音楽や映像を切り替えたり、エフェクトをかけたりできるようにした。

プロジェクトに携わったWITH ALS代表の武藤将胤氏。ALSを発症してからは、手でDJ機材を操作することが難しくなったという。発表会ではJINS MEMEを用いたVDJパフォーマンスを披露した。
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プロジェクトに携わったWITH ALS代表の武藤将胤氏。ALSを発症してからは、手でDJ機材を操作することが難しくなったという。発表会ではJINS MEMEを用いたVDJパフォーマンスを披露した。
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プロジェクトに携わったWITH ALS代表の武藤将胤氏。ALSを発症してからは、手でDJ機材を操作することが難しくなったという。発表会ではJINS MEMEを用いたVDJパフォーマンスを披露した。