米LO3 Energy社と欧州の電力市場であるEPEX SPOTは12月12日、ブロックチェーン技術を活用し、地域のマイクログリッドを卸電力市場に接続すると発表した。この接続プロジェクトに関し、両者が協力するとの覚書にフランスのパリで署名した。

 LO3 Energy社は、ブロックチェーン技術を活用したピア・ツー・ピア(P2P)型エネルギー取引に関する技術開発や事業を行うベンチャー企業。

 ニューヨーク州ニューヨークのブルックリン地区で、個人が太陽光発電システムで発電した電力を他の消費者に融通するといった取り組み「ブルックリン・マイクログリッド」実証プロジェクトにおいて技術を提供した実績がある(図)。

「ブルックリン・マイクログリッド」の10kW太陽光発電システム
「ブルックリン・マイクログリッド」の10kW太陽光発電システム
(撮影:日経BP総研クリーンテック研究所)
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 今回の提携により、欧州で実証プロジェクトを開始することを計画している。具体的には、LO3 Energy社が開発したP2P型エネルギー取引プラットフォームである「Exergy」などの技術を欧州のコミュニティ・マイクログリッドで導入し、両社協力の下でこれらのP2P市場をEPEX SPOTの卸売市場に接続するとしている。

 マイクログリッドを卸電力市場に接続することで、システム運用の柔軟性や電力価格の透明性が増加するといった利点がある。マイクログリッドの参加者は、所有する分散エネルギー資源の価値をより高めることが可能になるという。

 例えば、太陽光発電システムを所有する需要家が電力網を介して余剰な電力を売ったり、クリーンなエネルギーを求める消費者が市場価格で電力を購入したり、定置型蓄電池でエネルギー消費を最適化したりといったことが可能になると想定している。

 今回のLO3 Energy社との提携について、EPEX SPOTのJean-François Conil-Lacoste会長は、「エネルギー分野は、かつてない状況にある。このような市場でサービスを提供し、エネルギー転換を進めるためには、革新的なデジタル技術によるソリューションが必要だ」と説明している。

 LO3 Energy社のLawrence Orsini 最高経営責任者(CEO)は、「今回の提携は、電力市場において最も影響力のある技術用途の一つとなるだろう」と述べている。

 エネルギー分野では現在、再生可能エネルギーによる分散電源とブロックチェーン技術を組み合わせて価値を創出する取り組みが世界中で活発化している(関連記事1)(関連記事2)。

 今回のEPEX SPOTとLO3 Energy社の提携は、従来型の電力取引の仕組みにブロックチェーンを活用したP2P型電力取引という伝統破壊的な技術を融合させる試みとして注目される(関連記事3)。