「NEアナログ・イノベーション・アワード 2016」の最優秀賞が、広島大学 先端物質科学研究科 半導体集積科学専攻 教授の藤島実氏に贈られる。同氏らの研究成果は、300GHz帯のテラヘルツ(THz)波の無線通信部をCMOS半導体で実現する道を開き、100Gビット/秒の無線通信システムの低コスト化をもたらす可能性がある。同アワードは、日経エレクトロニクスによる表彰制度「NEイノベーション・アワード」の1つで、今回は優れたアナログ技術を選んだ。

 審査員特別賞には、静岡大学 電子工学研究所 教授の川人祥二氏による240フレーム/秒の8Kテレビ放送向けCMOSセンサー技術、日経エレクトロニクス読者賞には、慶応義塾大学 理工学部 電子工学科 教授の黒田忠広氏によるIC・ボード間非接触伝送の新原理(近傍電磁界を応用)に基づく技術がそれぞれ選ばれた。

 アナログ信号に満ちたリアルな世界をIT領域に持ち込むIoTの時代、ますます重要性を増すアナログ技術に焦点を当てているのが、今回のアワードだ。2017年1月25日に東京・品川で開催する記念シンポジウムでは、オーディオ回路の大半に使われているΔΣ変調回路を発案し普及に貢献したアナログ回路の大家Bob Adams氏(米IEEE Fellow、米Analog Devices社Fellow)を招聘、同氏の講演会を贈賞式と共に催す。独創的なアナログ回路を発案し続けながら、産業界の発展と所属企業の収益に貢献している秘訣を語る。

 記念シンポジウムでは、何の変哲もなかったという学生から、著名な技術者として認められるまでになった楠田義憲氏(Analog Devices社)と、日経エレクトロニクス編集長との対談が予定されている。記念シンポジウムへの参加は無料。事前登録の上で当日のシンポジウムに参加しアンケートへ回答した技術者のうち、50名に電子工学の学習キット、50名に日経エレクトロニクスの無料購読が贈られる。