今回開発した銅マンガン錯体光触媒
今回開発した銅マンガン錯体光触媒
(出所:JST、東京工業大学)
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 東京工業大学と産業技術総合研究所(産総研)らの研究グループは、銅(Cu)錯体とマンガン(Mn)錯体から構成される光触媒を作成し、可視光を照射することで二酸化炭素(CO2)を一酸化炭素(CO)やギ酸(HCOOH)へ高効率に還元できること見出した。11月28日に発表した。

 これまで高効率なCO2還元光触媒反応は、レニウム(Re)のような地球上にわずかしか存在しない希少金属や、ルテニウム(Ru)のような高価な貴金属を用いた光触媒しかなかった。一方、安価で大量に使える卑金属を用いた光触媒は耐久性が低く、効率も十分なものではなかった。

 今回、発光性の銅錯体とマンガン錯体を組み合わせた光触媒システムを開発した。同触媒の効率・耐久性は、量子収率が57%、ターンオーバー数が1300回以上と、従来の卑金属触媒の性能を大きく上回り、貴金属や希少金属を用いた高効率触媒と同等以上の結果を示した。

 今回の成果は、大規模に人工光合成を実現するための第一歩になるとしている。今後は、新光触媒の機能を向上させるとともに、地球上の多量に存在する安価な水を還元剤に用いる半導体光触媒との融合を目指す。

 科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業(CREST)の支援のもとで実施した。研究成果は、米国化学会誌「Journal of the American Chemical Society」に11月27日(現地時間)掲載された。

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